本記事では、これまでに報告された臨床研究を踏まえ、マンジャロの作用機序とその効果について解説いたします。
マンジャロの特徴はこちらの記事もご参照ください。マンジャロは、アメリカのイーライリリー社によって開発されたGIPとGLP-1と呼ばれるホルモンと同じ作用を持つ薬剤です。週に1回、皮下に自己注射を行います。
GIPとGLP-1は食事をとったときに小腸から分泌され、血液を通って、膵臓に運ばれます。膵臓はインスリンをつくっている臓器です。GIPやGLP-1が膵臓に働くと、インスリンの分泌が増加します。インスリンが分泌されると、血糖値が下がります。
2022年に米国FDAにより2型糖尿病治療薬として承認され、その後、肥満症治療への適応拡大も進められています。
この薬剤は、GLP-1受容体作動薬のインクレチン効果に加え、GIP受容体への作用によって、より強力なインスリン分泌促進作用、食欲抑制、胃排出遅延などが期待されます。
マンジャロの体重減少効果については、SURMOUNT試験が特に注目されています。
2022年にNew England Journal of Medicineという有名な論文雑誌に掲載されたSURMOUNT-1試験では、肥満または過体重の成人2,539名を対象に、マンジャロを週1回皮下注射で投与したところ、16週以降から有意な体重減少が認められました。
マンジャロ用量 | 平均体重減少(%) |
5mg | -15.0% |
10mg | -19.5% |
15mg | -20.9% |
SURMOUNT1試験におけるマンジャロの体重減少効果
SURPASS J-mono試験におけるマンジャロの体重減少効果
また、マンジャロ 5 mg/10 mg/15 mgを週1回投与したときのデュラグルチド(トルリシティ) 0.75 mg投与に対する優越性を検討するSURPASS J-mono試験でも、体重のベースラインから投与52週時までの変化量は、マンジャロ 5 mg群で-5.8 kg、マンジャロ 10 mg群で-8.5 kg、マンジャロ 15 mg群で-10.7 kg、デュラグルチド 0.75 mg群で-0.5 kgであった。体重のベースラインから投与52週時までの変化量において、いずれのマンジャロ群でもデュラグルチド 0.75 mg群に対する優越性が検証されました。
SURPASS試験では、主に2型糖尿病患者におけるマンジャロの血糖降下作用が評価されています。SURPASS-2試験(2021年、NEJM掲載)では、マンジャロとセマグルチドとの直接比較が行われ、HbA1cの低下幅はマンジャロ群で最大2.46%と報告されました。
薬剤 | HbA1c平均低下幅(%) |
マンジャロ5mg | 約2.09% |
マンジャロ10mg | 約2.37% |
マンジャロ15mg | 約2.46% |
セマグルチド1mg | 約1.86% |
マンジャロは、インスリンに依存していない段階でも高い血糖改善効果を発揮し、経口薬との併用でより良好な血糖コントロールが得られます。
SURPASS J-mono試験におけるHbA1c低下効果
HbA1cのベースラインから投与52週時までの変化量はマンジャロ 5 mg群で-2.4%、マンジャロ 10 mg群で-2.6%、マンジャロ15 mg群で-2.8%、デュラグルチド 0.75 mg群で-1.3%であった。HbA1cのベースラインから投与52週時までの変化量は、マンジャロ 5 mg群、10 mg群及び15 mg群において、デュラグルチド 0.75 mg群に対する優越性が示されました。
若年層の糖尿病予備群にとって、「体重管理」と「血糖の安定」は重要な課題です。マンジャロは、その二つを同時に改善する可能性がある薬剤として、特に20〜40代の方にとって魅力的な選択肢となり得ます。
当院では食事・運動療法の見直しを基本としつつ、必要に応じてマンジャロをはじめとした最新の薬剤を活用し、患者様一人ひとりの生活に寄り添った医療を提供いたします。
特に、生活習慣の改善意欲がある若年層の方には、専門医による定期的なフォローアップを通じて、長期的な健康維持とQOL(生活の質)の向上を支援しております。
マンジャロ(チルゼパチド)は、体重減少と血糖コントロールの両面において高い効果が期待される新しい選択肢です。エビデンスに基づいた治療が可能であり、適切に使用することで生活習慣病の予防や健康増進につながります。
当院では、マンジャロを含む多角的な治療アプローチを通じて、患者様の健康を総合的にサポートしております。ご興味のある方は、ぜひ一度ご相談ください。
監修: Myクリニック本多内科医院 院長 本多洋介