・発作性心房細動
発作を起こしても一時的で、数時間から数日、長くても1週間以内には自然に止まります。
・持続性心房細動
発作が1週間以上続きます。放置していると、慢性に移行していきます。
・慢性心房細動
発作が長期にわたって続き、薬剤などで治療しても止めるのが難しい状況です。
・よくある症状
「動悸、息切れ、胸の不快感、めまい」ですが、慢性化した心房細動ほど自覚症状が少ないことが多いです。
発作性心房細動の方は激しい動悸や胸の苦しさで受診されるケースが多く、動悸症状の後の失神やめまいで受診される方もいらっしゃいます。後者の場合は「徐脈頻脈症候群」と言われる頻拍発作の後の徐脈で失神やめまいの症状を呈している状態です。・見過ごされやすいケース
症状に個人差が大きく、症状が断続的で、日常生活に大きな支障を感じない場合も多いという理由が挙げられます。高齢者の場合には「動悸はするけど、そこまで気に留めていなかったわ」と言われる方もいます。中には無症状であり、健康診断の心電図で初めて指摘されるケースもあります。
3-1
脳梗塞リスクの軽減
心房内の左心耳と言われる部分でできた血栓が脳に飛ぶと、突然の言語障害や半身麻痺といった重篤な後遺症を招きます。左心耳に出来る血栓は脳の血管の太さと比べると巨大であり、心房細動を原因とした脳梗塞は症状が重篤であるケースが非常に多いです。早期に抗凝固療法を開始することで、そのリスクを大幅に下げられます。
心房細動を原因とした脳梗塞を発症した有名人では読売ジャイアンツ終身名誉監督の長嶋茂雄さんがいらっしゃいます。脳梗塞が起こる原因、予防法などは別の機会に詳しくお話致します。
3-2
心機能の維持
長期間の心房細動放置は心房・心室に負荷をかけ、心房機能の低下、心機能の低下を引き起こし、心不全を進行させます。心機能の低下が見られない心不全(HFpEF)という概念がありますが、心房機能の低下は大きくHFpEFに関わっていると言われています。心房細動が慢性化すると、元の洞調律に戻すことは難しいため、早期に治療を始めることで、将来的に心機能を温存できる可能性が高まります。
4-1. 聴診と脈拍触診
問診時に聴診器で不規則な心音を確認し、手首の脈拍を触れて不整をチェックします。
Case 1)
70代女性 先日、風邪症状で来られた際に聴診をしていると、頻脈と脈不整を聴取しました。お話を聞くと、しばらく前から朝に動悸があったけど、特に気にしていなかったとのことでした。風邪症状は症状を緩和する薬で対応し、抗不整脈薬の頓服により動悸症状の改善も得られ、現在も外来に通院して頂いております。4-2. 安静時心電図検査(12誘導)
最も手軽で一般的な方法です。心房細動の特徴的な「P波消失」「極めて不規則なRR間隔」を捉えます。
※健診の心電図で心房細動と言われた方は、元の心電図(健診の時の心電図)で確認する必要がある場合もあります。
Case 2)
60代の男性
無症状ですが、健診で心房細動を指摘されたということで受診されました。昨年の心電図では洞調律であり、いつ心房細動に移行したかは分かりませんでした。心臓超音波検査では左房という場所の拡大がそれほど目立たず、心房細動の持続期間は長くないと考え、総合病院にてカテーテルアブレーションの治療を受けて頂き、心房細動の再発も無く、経過しております。
4-3. ホルター心電図検査
24時間以上連続して心電図を記録し、発作性心房細動や一過性の不整脈を検出します。
Case 3:72歳女性
主訴はめまい・ふらつきということで近くの内科より紹介頂きました。
経過としては2週間前より、時々動悸の後にめまいやクラクラする感じを自覚することが増えたとのことでした。内科クリニック受診時の心電図では特に自覚症状なく、心電図も正常範囲という所見でしたが、症状から不整脈の除外をお願いしたいということで、糖クリニックへご紹介頂いました。
心臓超音波検査で明らかな心機能の異常が無いことを確認し、ホルター心電図を施行したところ、発作性の心房細動と心房細動が止まる際に洞停止を認め、同じタイミングでめまい症状を自覚していました。
徐脈頻脈症候群と判断し、カテーテルアブレーション、ペースメーカー植え込み術などを視野に入れて総合病院 不整脈科に紹介しました。カテーテルアブレーションにて発作性心房細動の根治を得て、フォローアップのホルター心電図でも特に洞停止の所見は認めず、無症状で経過しているため、現在も定期的に外来通院して頂いています。
4-4. スマートウォッチや携帯心電計
最新のスマートウォッチや携帯心電計では、手軽に心拍リズムを測定し、不整脈の疑いをアラートしてくれます。若い方や、モバイル端末に詳しい方を中心に、当院でも導入例が増えています。
Apple Watchの心電図は、「家庭用心電計プログラム」及び「家庭用心拍数モニタプログラム」が家庭医用医療機器として承認されています。正確性は以前より格段に向上しつつあり、常に身に着けることができる医療機器として有効性が示されつつあります。
Apple Watchの中の心電図アプリケーションは、自宅や外出先で症状があった時など、随時、心電図を記録することを可能にし、知りたいと思った時に心拍リズムを記録できます。これは病院やクリニックで心電図を撮るときには異常が見つからなかった方々にとって希望の光になる可能性があります。また、不規則な心拍の通知機能は、不整脈に最も多い心房細動の兆候を検知するために役立ちます。
「動悸」「息切れ」の症状は心電図などの検査で異常が見つからない場合には病気ではないと言われてしまうことの多い症状です。当院では皆様の症状に丁寧に耳を傾け、必要に応じて速やかに心電図やホルター心電図、心臓超音波検査を実施しております。
一度の検査で異常が見つからないけれども、症状が持続している場合には定期的なフォローを行うことで対応し、場合によってはスマートウォッチや携帯心電計によるサポートを行っております。
高齢者の患者様には特に、定期健診での心電図や聴診によって早期発見・早期対処できるように努めています。
心房細動は放置すると深刻な合併症を引き起こすリスクがありますが、早期に発見し適切な治療を開始すれば、安心して日常生活を送ることが可能です。
もし少しでも「動悸が多い」「立ちくらみが気になる」といった症状があれば、ぜひ循環器内科専門医である当院での診察をお受けください。