慢性心不全、総合病院じゃないとダメ?専門医による地域での継続治療という選択肢
今回は高齢者が罹患することの多い、「慢性心不全」に関するお話です。横浜市神奈川区にある循環器内科クリニックの視点から、慢性心不全治療の新たな選択肢をご提案します。
現在、慢性心不全(まんせいしんふぜん)で総合病院に通院中の高齢の患者様やご家族の中には、「心不全の治療は大きな病院で続けないと不安…」と感じている方も多いのではないでしょうか。
しかし実は、
地域の循環器内科専門医による継続的な診療という安心で便利な選択肢があります。当院では、総合病院と連携しながら慢性心不全の専門的な治療フォローを行っており、身近な医療機関として患者様を支える体制を整えています。
本記事では、心不全の基本から地域密着型治療のメリット、実際の症例までをわかりやすく解説します。
心不全とは?慢性心不全をやさしく解説
心不全とは、心臓のポンプとしての機能が低下して息切れやむくみなどの症状が現れてきた状態を示し、放置すると命に関わることもあります。病名ではなく「心臓の働きが不十分になった結果起こる状態」の定義であり、様々な心臓病の終末像ともいわれます。急に症状が悪化するものを急性心不全、症状が慢性的に続き、次第に進行するときの状態を慢性心不全と呼びます。心不全を起こす原因は一つではなく、心筋梗塞や弁膜症といった心疾患のほか、長年の高血圧などで徐々に心臓に負担がかかる場合など様々です。いったん心不全になると完全に治すことは難しく、長い時間をかけて進行していく慢性疾患です。
日本では高齢化に伴い心不全患者さんが年々増加しており、その数は現在約120万人、2030年には約130万人に達すると推計されています。この数はがん患者より多く、感染症の大流行になぞらえて「心不全パンデミック」と呼ばれる社会問題になっています。
特に
高齢者では心不全を繰り返しやすく、入退院を何度も繰り返すうちに生活の質(QOL)が低下してしまうことが指摘されています。実際、慢性心不全の患者さんは体調悪化による再入院リスクが高く、予後(病気の経過・見通し)も決して楽観できません。心不全では、心不全の程度が軽い患者さん(NYHA分類ⅠからⅡ度)でも、1年で5~10%亡くなりますし、重篤な患者さん(NYHA分類 Ⅳ度)では、1年で50~60%が亡くなります。そのため、重篤な心不全の予後は、がんと同程度、あるいは一般的ながんより予後が悪いといえるでしょう。また、
心不全は悪化を繰り返すことにより、心機能もさらに低下していくと言われています。だからこそ、症状の早期発見や適切な治療の継続、リハビリテーションと生活管理によって悪化を予防することがとても大切になります。

日本心臓財団のHPより(https://www.jhf.or.jp/)
総合病院だけじゃない:地域の循環器内科で続ける心不全治療
「慢性心不全の治療=大病院で専門医に診てもらうもの」と思われがちですが、必ずしも総合病院だけでしか治療が出来ないわけではありません。地域のクリニックでも循環器専門医がいれば、総合病院に劣らない専門的な慢性心不全の管理が可能です。当院の院長も総合病院の循環器内科で長年診療を続けてきた専門医であり、地域の皆様に質の高い心臓病診療を提供しています。
総合病院では高度医療機器を用いた検査・処置が充実していますが、紹介状が必要であったり、毎回どの医師に当たるか分からず不安との声もあります。定期的に通院していても、担当医も異動してしまうケースもありますし、担当医の外来診療日で無い日に受診すると、いつも診てもらっている先生の診察を受けられないというケースも多々あります。一方、当クリニックのような地域密着型の循環器内科では、毎回同じ医師が継続して診療を行うため安心感があり、些細な症状でも気軽に相談しやすい、細かな症状や病状の悪化に早く気付くことができるという利点があります。
もちろん私たちは総合病院との連携(病診連携)を密接に行っています。症状や検査結果から「より高度な検査・治療が必要」と判断すれば、速やかに近隣の総合病院の循環器科へご紹介します。総合病院で精密検査や治療、手術などが行われた後は、担当医から当院へ治療経過の報告が届き、その後の投薬管理や定期フォローアップは当院で継続いたします。このように病院とクリニックが役割分担し協力する体制をとることで、患者様は必要な時に高度医療を受けつつ、普段の通院は身近なクリニックで負担少なく続けられるのです。実際、心不全が社会的に大きな問題となる中で「クリニック・病院・在宅医が連携して適切な時期に高度治療を行い、その後はクリニックで投薬管理を続けることが重要である」と専門医も指摘しています。当院もまさにこの方針で、総合病院の専門治療と地域での継続ケアを両立させ、患者様にとって最善の医療提供に努めています。
実際の症例紹介:60代男性・慢性心不全の継続治療ケース
ここで、当院で慢性心不全の継続治療を受けている患者様の一例をご紹介します。60代男性のAさんは、高血圧と糖尿病で薬を飲んでいましたが、元気にお仕事をされていました。ある日、階段を上った際に強い息切れと胸の痛みを感じ救急搬送され、総合病院で急性心不全と診断されました。原因は心筋梗塞)による心機能の低下であり、入院、カテーテルによる治療により無事に退院することが出来ました。その後、主治医から慢性心不全として長期的な管理が必要と説明され、退院後のフォローアップについて相談されたAさんとご家族は、自宅から通いやすい当院での継続治療を希望されました。総合病院の担当医から当院医師へ詳しいサマリー(経過報告)が共有され、スムーズに当院での外来フォローが開始されました。
当院でのフォロー内容: Aさんは退院後、月に1回の頻度で当院を受診し、血圧・心拍数や体重の変化、血液検査(腎機能や心不全の指標であるNT pro BNP値など)のチェックを行いました。総合病院で開始された心不全のお薬は当院で継続処方し、適宜用量の調整を行いました。例えば、利尿剤の量は季節や症状に応じて増減し、むくみや体重変化をコントロールしています。また、減塩食のアドバイスを行い、水分摂取量や日々の運動量についても具体的な指導を実施しました。幸いAさんは当院での継続通院開始以降、一度も心不全悪化による再入院をしていません。現在は体調も安定しており、趣味のウォーキングも再開できるまで回復されています。「
身近に専門の先生がいる安心感のおかげで、生活の不安が減りました」とAさんご本人も笑顔を見せておられます。
実際の症例紹介:80代男性・地域密着ケアで支えるケース
次に、80代男性のBさんのケースをご紹介します。Bさんは高血圧と心房細動を長年抱えており、数年前から徐々に心不全症状(息切れ、足のむくみ)が出現していました。当初は総合病院の循環器外来で治療を受けていましたが、加齢に伴い通院が負担になってきたこと、さらに数か月おきに心不全増悪で入退院を繰り返す状況にご家族も不安を感じておられました。そこで主治医と相談のうえ、普段は自宅近くの当院で継続フォローし、心不全悪化の兆候が見られた時には総合病院に入院するという体制に切り替えました。
当院でのフォロー内容: Bさんの場合、月1回の外来受診に加え、在宅療養を支えるため訪問看護師による週1回の訪問看護を導入しました。訪問看護師は血圧・脈拍や体重、浮腫の状態をチェックし、ご家族とも連携して日々の体調変化を観察しています。これは心不全の悪化兆候を早期に捉えるために重要な取り組みです。心不全の悪化の兆候が見られた際には連絡を頂き、早めに利尿剤の調整を行うことで対応しています。当院では訪問看護ステーションやケアマネジャー(介護支援専門員)とも情報共有しながら診療を行っています。さらに、心不全は他の疾患も併存しやすいため、当院では総合内科の視点から腎臓の機能悪化や貧血、糖尿病の管理にも目を配り、包括的に診療を行っています。
Bさんは当院での継続治療に移行してから約半年になりますが、この間大きな悪化なく在宅で安定した生活を送られています。息切れのため外出は控えめですが、ご家族と自宅周囲で散歩をするなど日常を楽しまれています。
もし体調に変化があっても、「すぐ近くに頼れるクリニックがある」という安心感から、ご本人もご家族も落ち着いて対処できると話されています。実際、あるとき軽い風邪をきっかけに体重増加と息苦しさが出た際も、ご家族が早めに当院へ連絡してくださいました。外来で血液検査や胸部X線を行い、利尿剤増量と安静指示をすぐ行ったことで入院を回避することができました。このように地域のクリニックで密にフォローすることで、心不全の増悪を未然に防ぎ、入院を減らすことが期待できます。もちろんBさんの容体が急激に悪化した場合には、提携する総合病院に速やかに入院できる体制を準備していますので、その点でも安心して頂けるように配慮しています。
専門医による継続診療がもたらす安心感
以上の症例からもお分かりのように、循環器専門医が継続して診てくれる安心感は慢性心不全の患者様に重要なことです。心不全は症状のわずかな変化を見逃さず対処することが重要ですが、長年の経過の中で患者様自身が「これは心不全による症状なのか、他の原因なのか」判断に迷う場面も出てきます。そんな時、気軽に相談できて状態を把握している主治医(かかりつけ医)がいることで、早めの対応が可能になります。
実際、日本心臓財団も「
心不全の早期発見・治療のためには、医療機関だけでなく地域全体で多職種が連携して発症や重症化を防ぐ体制づくりが急務」と述べています。
当院は地域の総合病院や訪問看護、行政サービスとも連携し、患者様を支えるチーム医療を心がけています。専門医が中心となり、看護師や薬剤師、栄養士などとも協力して包括的にケアを行うことで、「ここに任せておけば大丈夫」という信頼感に繋がります。
また、専門医であるがゆえに最新の心不全治療ガイドラインに沿った治療戦略を立てられることも強みです。新しいお薬の情報や治療法についても常に情報を得ており、必要に応じて患者様に提案致します。もし、ペースメーカー・心臓再同期療法(CRT)といったデバイス治療が適切と判断すれば、総合病院と連携して導入を検討します。
その後の細かな調整や経過観察は当院で行い、患者様が常に最適な治療を受けられるようサポートいたします。このような継続診療により、信頼関係の構築にも繋がり、より良い医療を形作っていくと考えています。
地域密着ならではの利便性と柔軟な対応
地域密着型クリニックで治療を続けることの利便性も見逃せません。総合病院はどうしても待ち時間が長くなりがちですが、クリニックであれば比較的スムーズに受診できる場合が多く、体力のない高齢の方でも通院の負担が軽減されます。横浜市神奈川区にお住まいの方であれば、当院はアクセスも良く、ご自宅から無理なく通える距離にあります。頻回な受診が必要なときでも移動の負担が少ないことは大きなメリットです。
また、
柔軟な対応ができるのも地域クリニックの強みです。例えば当院では臨時の受診にも特に制限なく対応しています。「少し調子が悪いけど次回の受診日まで待つべきか…」という場合も、お電話を頂ければ症状に応じたアドバイスを行い、必要なら早めの受診を提案致します。大病院では主治医と連絡を取るのも難しいケースがありますが、当院なら顔なじみのスタッフにすぐ相談できる安心感があります。さらに、当院は総合内科も兼ねておりますので、心不全以外の体調不良(風邪症状や他の持病の悪化など)についても一貫して対応が可能です。複数の診療科に通う手間を減らし、かかりつけ医としてトータルに健康管理をサポートできるのも地域クリニックならではの利点です。
当院は患者様のお話をゆっくり伺い丁寧に説明することを心掛けています。治療や生活上の疑問についても遠慮なくご質問ください。患者様とご家族に納得して治療を続けていただけるよう、分かりやすい説明を重視しています。こうした細やかなコミュニケーションも、地域密着のクリニックだからこそ実現しやすいポイントです。
今回のまとめ
慢性心不全は長いお付き合いが必要な病気ですが、治療の場は総合病院だけではなく、地域の循環器内科クリニックという選択肢があります。循環器専門医による継続的な診療と、総合病院との強固な連携体制により、安心・安全かつ身近な心不全ケアを受けることが可能です。横浜市神奈川区の循環器内科クリニックである当院では、実際に多くの心不全患者様が地域での治療に切り替えて通院して頂いています。総合病院での高度治療が必要な際には適切にバトンタッチしつつ、普段の管理は私たちが責任を持ってサポートいたします。
心不全患者さんが住み慣れた地域で安心して暮らしながら治療を継続できるよう、当院はこれからも尽力してまいります。現在総合病院に通院中で、通院を負担に感じられている方は、ぜひ一度当院にご相談ください。専門医による地域密着型の慢性心不全診療で、皆様の心臓の健康をしっかりとお守りいたします。どうぞお気軽にお問い合わせください。
🏥 診療科:内科、循環器内科
🔷 総合内科専門医、循環器内科専門医
📍 Myクリニック本多内科医院(横浜市神奈川区反町4丁目27-1)
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ワクチンの予約に使用できる他、今後多方面での展開を考えております。
監修: Myクリニック本多内科医院 院長 本多洋介