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【医師が解説】咳・咳喘息・気管支喘息の違いを医師が解説|長引く咳の原因と治療法

【医師が解説】咳・咳喘息・気管支喘息の違いを医師が解説|長引く咳の原因と治療法

1. はじめに – 増える「咳」に悩む患者さん

近年、長引く咳で医療機関を受診される方が増加しています。咳は風邪に伴うごく一般的な症状のため、「少し長引いているけれど病院に行くほどではない」と思われがちかもしれません。しかし、「熱も下がって、喉の痛みも引いて、風邪は治ったはずなのに咳が続いている」という状態には注意が必要です。実は、3週間以上にわたる慢性的な咳の原因で最も多い疾患が「咳喘息」だといわれています。 咳喘息とは、その名のとおり長引く咳を唯一の症状とする喘息の一種です。一般的に知られる「喘息(ぜんそく)」は息苦しさやゼーゼーといった喘鳴(ぜんめい)を伴う気管支喘息のことを指しますが、咳喘息はそれらの症状を伴わない別タイプの喘息です。 本記事では、咳・咳喘息・気管支喘息の違いをわかりやすく解説し、長引く咳の症状を軽視せず早期に受診することの大切さをお伝えします。また、当院(横浜市神奈川区・本多内科医院)での治療方針(吸入薬による初期治療)と、実際の症例紹介を通じて、咳喘息への対処法をご紹介します。咳にお困りの方はぜひ最後までお読みください。

2. 咳の持続期間による分類

ひと口に「咳が続く」と言っても、その持続期間によって原因や対処法が異なることをご存知でしょうか。医学的には咳の長さで以下の3つに分類されます:
  • 急性咳嗽(きゅうせいがいそう):発症から3週間未満の咳
  • 遷延性咳嗽(せんえんせいがいそう):3〜8週間持続する咳
  • 慢性咳嗽(まんせいがいそう):8週間以上続く咳
多くの風邪による咳は1~2週間程度で治まるため急性咳嗽に分類されます。3週間以上続く咳(遷延性~慢性咳嗽)になってきたら、単なる風邪によって咳が長引いているということ以外の状況であることを疑う必要があります。実際、「8週間以上続く咳の原因の80%以上は、咳喘息・アトピー咳嗽・副鼻腔気管支症候群の3つで占められる」という報告もあるほどで、長引く咳の大半は何らかの呼吸器の疾患が背景にあるのです。アレルギーに関しては花粉症に対する舌下免疫療法も当院で行っておりますので、是非ご相談ください、

3. 咳喘息の特徴と診断

咳喘息は気管支喘息と非常によく似た病態ですが、「咳のみが長期間続く」点が特徴です。ぜんそく発作のような息苦しさや喘鳴(ゼイゼイ・ヒューヒューという音)は通常みられず、痰もほとんど出ないことが多いです。風邪や新型コロナなどの呼吸器感染症をきっかけに発症し、熱や鼻汁など他の症状が治まった後も咳だけが何週間も残るケースがよくあり、以前よりも増えてきているように感じます。また、夜間から明け方にかけて咳がひどくなる、季節の変わり目や寒暖差の大きい日に悪化する、市販の咳止めが全く効かない──といった場合は咳喘息の可能性が高いと考えます。 咳喘息では通常の飲み薬の咳止めでは症状が改善せず、代わりに吸入ステロイドや気管支拡張薬(いわゆる吸入薬)がよく効く点も特徴です。これは咳喘息がアレルギーや炎症によって気道が敏感になって起こる疾患であり、気道の炎症を抑える吸入治療が奏功するためです。咳喘息は「咳を唯一の症状とする喘息の亜型」と位置付けられ、早期に治療を行わないと、30-40%の方々将来的に気管支喘息へ移行することも報告されています。咳喘息が疑われる場合、早期に診断して治療を始めることが大切です。

● 咳喘息の診断基準

長引く咳の全てが咳喘息というわけではありません。医師は問診・診察や検査を通じて他の原因を除外し、総合的に咳喘息かどうか判断します。診断の目安として、次のようなポイントが知られています: 咳喘息の診断基準   特に最後の項目は診断的治療(治療効果を見ることで診断を裏付ける方法)として有用です。胸部レントゲンや肺機能検査で大きな異常がない慢性の咳、かつ気管支拡張剤の吸入で咳が軽快する場合、咳喘息である可能性が高まります。 正式な診断基準では「8週間以上続く咳」とされていますが、8週間も放置すれば症状が悪化してしまう恐れがありますし、コロナ渦以降は咳の症状に世間が敏感になっているという側面もあります。実臨床では数週間の段階で咳喘息を強く疑えば治療を開始することが推奨されており、「咳が2〜3週間以上続いたらおかしいと思って早めに受診」することが肝心であり、当院でも長引く咳の場合には早期に気管支拡張薬の投与を行い、効果を確認するという診療を行っております。

4. 気管支喘息(ぜんそく)との違い

咳喘息と気管支喘息はどちらも「喘息(Asthma)」分類される疾患ですが、症状の現れ方に明確な違いがあります。最大の違いは、呼吸が苦しくなるほど気道が狭くなるかどうかです。
  • 咳喘息(せきぜんそく):気道の過敏性はあるものの、ゼーゼー・ヒューヒューという喘鳴や強い息苦しさを伴いません。持続する症状は乾いた咳のみで、安静時の胸部聴診や肺機能検査でも正常なことが多いです。夜間の咳込みなど生活上の支障はありますが、急に命に関わるような重篤な発作に至ることは通常ありません。
  • 気管支喘息(きかんしぜんそく):慢性的な炎症で気道が狭くなり、咳に加えて「ゼーゼー」という喘鳴や息切れ・呼吸困難(息苦しさ)を伴うのが特徴です。特に症状は夜間〜明け方や運動時に悪化し、発作時には息が苦しくて横になるのも辛くなる場合があります。喘鳴は酷いときには離れていても喘鳴が聞こえるほどで、聴診器で肺の音を聞けば典型的なヒューヒューといった音が確認できます。気管支喘息では気道の炎症と狭窄が強いため、肺機能検査でも1秒量の低下など明らかな異常所見が現れます。症状が重い場合、夜間や早朝に発作的な咳込みと喘鳴で目が覚めることもありますし、場合によっては救急受診が必要になることもあります。薬での管理が難しい気管支喘息の重責発作の場合には人工呼吸器での管理が必要になることもあります。
上記のように、「喘鳴や呼吸困難の有無」が咳喘息と気管支喘息を見分ける大きなポイントになります。言い換えれば、「ゼーゼーする発作がない喘息」が咳喘息なのです。「先行する風邪の症状などがあったかどうか」ということも見分けるポイントの一つになります。咳喘息の段階では肺機能が保たれているため一見軽症に思えますが、放置すると約30-40%の方々が数年以内に本格的な気管支喘息に移行するとされています。そうならないためにも、咳喘息の段階で適切に治療を行い、悪化を防ぐことが重要です。

5. 当院の診療方針と治療例(吸入薬による初期治療)

本多内科医院(横浜市神奈川区)では、咳喘息が疑われる患者さんに対し早期から積極的に吸入薬を中心とした治療を行っています。咳喘息は気管支喘息と同様に気道の炎症を抑える吸入治療が有効であること、コロナ渦以降、咳症状が気になるという方はやはり多いため、症状を長引かせないうちに早期治療を始めることが肝心だと考えています。具体的には、咳喘息と診断または疑った場合は吸入ステロイド薬を中心とした喘息治療薬の吸入を初期段階から開始します。必要に応じて発作時の気管支拡張薬や抗アレルギー薬の内服も組み合わせ、気道の炎症と過敏性を抑える治療を積極的に行います。 このように咳喘息を気管支喘息に準じて治療することで、咳症状は多くの場合1〜2週間ほどで落ち着いてきます。しかし症状が軽快してもすぐ治療を中断せず、数ヶ月かけて吸入ステロイドの量を徐々に減らしながら継続します。しっかりと3~6ヶ月程度維持治療を行えば、咳喘息から気管支喘息への移行を防げると考えられています。 咳喘息の治療は咳症状を早期に改善すること、長期的に気管支喘息への移行を防ぐことになりますので、当院でも患者さんの状態に合わせて治療計画を立て、症状の再発予防に努めています。

咳喘息の治療例

実際に当院で診察した症例の一例をご紹介します。40代の男性Aさんは、2ヶ月前にひいた風邪のあとだけ咳が治まらず、「長引く風邪かな?」と市販の咳止めを服用して様子を見ていました。これまでに気管支喘息の既往などはありませんでした。ところが咳は一向に良くならず、特に夜間から明け方にかけて咳込むため十分に眠れない日々が続きました。なかなか治らない咳に心配になったAさんは当院を受診。胸部レントゲンに異常はなく、聴診にて喘鳴も聴取されなかったことから、僕は咳喘息の可能性が高いと判断しました。Aさんには吸入ステロイド薬とβ2刺激薬の2つの有効成分が配合されているレルベアを処方し、毎日正しく吸入していただくことにしました。 すると1週間後の再診時には咳がほとんど改善し、夜も眠れるようになりました。Aさんご本人も「もっと早く来院すれば良かった」と驚かれるほど、吸入薬が奏功していました。急な吸入薬の中止は症状の再燃につながることを丁寧に説明させて頂き、その後も治療を続けてもらい、3ヶ月後には吸入薬を中止できるまでに症状が落ち着きました。その後Aさんの咳は再発せず、喘息発作に発展することもなく経過しています。このように、咳喘息は適切な治療によって早期に症状を抑え、将来的な喘息への進行を食い止めることができます。咳が長引いている方は、「たかが咳」「放っておけばそのうち治るだろう」と思わず治療を受けることをおすすめします。

6. 咳が長引くとき早期受診を勧める理由

咳喘息を含め、「ただの咳」と放置するのは大変危険です。咳が長引く場合はできるだけ早めに医療機関を受診して原因を調べることが重要ですが、その具体的な理由をいくつか挙げます。
  • 気管支喘息への移行リスク:咳喘息は適切な治療を行わないと約30-40%の患者さんが数年以内に気管支喘息に移行すると言われています。逆に言えば、早期から治療すれば多くの患者さんにおいて気管支喘息への移行を防げるとされています。
  • 症状の悪化と生活への支障:咳が続くと夜間に咳き込んで眠れなくなったり、十分な睡眠がとれず、日中の仕事・生活に支障を来すことがあります。早めに治療を開始すれば多くは1〜2週間程度で咳が改善し始めるため、早期に受診して治療を開始した方が患者さんの身体への負担も軽減できます。
  • 他の病気の見逃し防止:長引く咳の裏には、喘息以外にもアレルギー疾患、COPD(慢性閉塞性肺疾患)や副鼻腔炎、逆流性食道炎、肺結核や非定型抗酸菌症(非結核性抗酸菌症)、さらには肺がんなど重大な病気が潜んでいる可能性もあります。これらの疾患は医師の病歴聴取、採血、レントゲンの検査などで早期発見の可能性があります。特に発熱はないのに咳だけ続くような場合は専門医の診察を受けて原因を確かめることが大切です。
  • 咳喘息に対しては市販薬では治療が困難:「咳くらい市販薬で様子を見よう」と考える方も多いですが、先述のとおり咳喘息の咳は市販の咳止めでは良くならないことがほとんどです。原因に応じた気管支の炎症を抑えるような吸入薬が必要になってきます。専門的な診断・治療を受けることで早期の改善が期待でき、症状の悪化を防ぐことにも繋がります。

● 早めに受診すべきサインは?

  • 咳が2週間以上続いている
  • 夜間、咳で眠れない日が多い
  • 階段の上り下りなどで息切れしやすい
  • 痰(たん)の色が黄色や緑色に濁っている
  • 市販薬を数日試しても咳が一向に改善しない
上記のような状態に心当たりがあれば、一度医師に相談してみましょう。咳喘息である可能性、その他の疾患が隠れている可能性がありますので、早期に適切な対応をすることで、後々の重症化や長引く不調を防ぐことにつながります。

7. よくある質問(Q&A)

Q: 市販の咳止めでは治らないのでしょうか?

A: 残念ながら、咳喘息による咳は市販の風邪薬・咳止めでは改善しない場合がほとんどです。咳喘息は気道の炎症や過敏性によって起こる喘息の一種なので、炎症を抑える吸入ステロイド薬や気道を広げる気管支拡張薬など、医療機関で処方される薬でないと効果が乏しいことが多いです。いつまでも市販薬で粘るより、早めに受診して適切な吸入薬を使う方が早く症状の改善につながります。

Q: 咳喘息を放っておくと本当の喘息(気管支喘息)になりますか?

A: はい。咳喘息は通常の喘息(気管支喘息)の前段階とも言われており、放置すると約30から40%の患者さんが気管支喘息へ移行すると報告されています。実際に咳喘息から数年かけて喘息へ悪化してしまうケースは珍しくありません。ただし、適切な治療を行えば多くの場合で移行を防ぐことができるため、咳喘息と診断されたら「まだ咳だけだから」と油断せず、医師の指示通りに治療を継続し、症状がいったん改善したからと言って自己中断しないようにしましょう。

Q: 咳喘息の治療はどのように行い、どのくらい続ける必要がありますか?

A: 吸入薬による治療が中心です。気道の炎症を抑える吸入ステロイド薬を毎日使用し、必要に応じて気管支拡張薬の吸入や抗アレルギー薬、テオフィリンの内服を併用します。重症例では短期間のステロイドの内服を行うこともあります。症状が出なくなるまで通常数ヶ月間の治療継続が必要です。咳が治まってきた段階で自己判断により中止すると再発する恐れがあるため、医師と相談しながら少しずつ薬の量を減らし、3~6ヶ月を目安として治療を行っていきます。十分な期間の治療が、咳喘息の再発や気管支喘息への移行を防ぐことにつながります

Q: 息苦しさがないのに「喘息」と言えるのでしょうか?

A: 息苦しさ(呼吸困難)や喘鳴がなくても喘息の一種であるとされています。実際、咳喘息は咳以外の症状がない以外は気管支喘息と非常によく似た疾患です。症状が咳のみとはいえ気道には喘息と同様の炎症やアレルギー反応が起きており、気道の過敏性が亢進しています。症状が咳だけなので患者さん自身は「喘息」と気付きにくいですが、医療的には「 cough variant asthma」として正式に喘息のカテゴリーに入る病気です。咳喘息を放置するとこれまで述べてきたように、気管支喘息へ進展しうるため、「咳しか症状がないから大丈夫だろう」と自己判断しないようにしましょう。

8. まとめと来院案内

長引く咳の陰に潜む咳喘息と気管支喘息の違いについて、説明させて頂きました。 咳が続くとき、「まだ大丈夫」と先延ばしにしたり、自己判断するのではなく、一度医師の診察を受けましょう。咳喘息は早期に適切な治療を行えば速やかに症状が改善し、将来の気管支喘息への移行も食い止めることが可能です。市販薬で効果がない咳に悩んでいる方や、「もしかして咳喘息かも?」と不安を感じている方は、お気軽に当院までご相談ください。 横浜市神奈川区の本多内科医院では、咳や喘息の診療にも力を入れており、患者さん一人ひとりに寄り添った丁寧な治療を心がけております。予約なしで受診可能ですので、気軽にご相談ください。  

📞 電話:045-755-3039

📧 メール:mychondaiin@gmail.com

📍 Myクリニック本多内科医院(横浜市神奈川区反町4丁目27-1)

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監修: Myクリニック本多内科医院 院長 本多洋介

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