糖尿病になる人・ならない人の差とは?原因から見直す健康習慣
はじめに
「会社の同僚は甘い物が大好きなのに元気なのに、どうして自分だけ糖尿病になったのだろう…」そんな疑問や不安を抱いたことはありませんか?
糖尿病は日本では成人の約6人に1人が糖尿病またはその予備軍とされるほど身近な病気です。20代から70代まで幅広い年代で発症し得るため、決して他人事ではありません。しかし、糖尿病になる人とならない人にはいくつかの違いがあります。その違いを理解し、原因となる生活習慣を見直すことで、糖尿病は予防・改善することが可能です。
今回の内容では、患者さんの不安に寄り添いながら「糖尿病になる人・ならない人の差」について専門医の視点からわかりやすく解説し、今日から実践できる健康習慣の改善策をご紹介します。
最後には当院での診療についても触れていますので、「一度相談してみようかな」と思えるきっかけになれば幸いです。
糖尿病とはどんな病気か?
糖尿病とは、血液中のブドウ糖(血糖)の値が慢性的に高くなってしまう病気です。私たちの体は通常、膵臓から出るインスリンというホルモンの働きで血糖値を適切に調整しています。しかし糖尿病ではインスリンが不足する、正常な作用が出来なくなるなどの理由により、血糖コントロールが乱れ、高血糖の状態が続いてしまいます。その結果、全身の血管にストレスがかかり、動脈硬化を起こし、様々な合併症を引き起こします。例えば、失明につながる網膜症や腎不全による透析、手足のしびれなどの神経障害が代表的な糖尿病の合併症です。また、さらに血糖の高い状態が続くと動脈硬化が進行し、狭心症や心筋梗塞、脳卒中のリスクも高まります。このように糖尿病は放置すると怖い合併症につながるため、「サイレントキラー」と呼ばれることもあります。自覚症状が乏しいまま進行する厄介な疾患だからこそ、早めに自分の状態を把握し、対策することが大切です。
なお、
糖尿病と言っても原因によっていくつか種類があります。代表的なのは1型糖尿病と2型糖尿病です。1型糖尿病は自己免疫の異常により若年で発症することが多く、生活習慣とは関係なく膵臓のインスリン分泌が枯渇してしまうタイプです。これに対し、日本人の糖尿病患者さんの大半は2型糖尿病で、中高年以降に発症しやすく生活習慣と深い関係があるのが特徴です。本記事では主に2型糖尿病の方々を念頭に置いて、その原因と予防策を考えていきます。
なぜ糖尿病になるのか?原因とリスク要因
「なぜ自分が糖尿病になったのか」「どうしてあの人は糖尿病にならないのだろう?」――その答えの多くは遺伝的な体質と生活習慣の積み重ねにあります。2型糖尿病は、遺伝要因と環境要因(生活習慣)の組み合わせで発症すると言われます。確かに血縁者に糖尿病の人がいると発症しやすい傾向はありますが、それだけで必ずしも糖尿病になるわけではありません。日々の食事内容や運動習慣などの違いが、糖尿病になる人とならない人の差を大きく左右しているのです。
特に2型糖尿病のリスクを高める生活習慣や健康状態として、次のようなポイントが挙げられます。
- 食生活の乱れ: 「食べ過ぎ・飲み過ぎ」や偏った食事は糖尿病の大きな原因になります。甘い物や脂の多い物が好き、野菜や海藻が不足しがち、朝食を抜く、不規則な時間に食事をとる、といった習慣は血糖コントロールを悪化させます。特に過剰なカロリー摂取が続くと脂肪が蓄積し、インスリンの効き目が低下する、インスリン抵抗性が高いという状態となり、血糖値が上がりやすくなります。
- 運動不足: 日常的に身体を動かす機会が少ないと、筋肉での糖の消費量が減って血糖値が下がりにくくなります。デスクワーク中心で座りっぱなしの時間が長い人や、ほとんど運動しない人は要注意です。適度な運動習慣がないこと自体が糖尿病発症の独立したリスク要因になります。
- 肥満(特に内臓脂肪型肥満): 体重が多い、いわゆる肥満傾向にある方は糖尿病になりやすくなります。中でもお腹周りに脂肪がつく内臓脂肪型の肥満は、インスリン抵抗性(インスリンの効果が出にくい状態)を招きやすく、高血糖を引き起こしやすいことが知られています。
- 加齢: 年齢とともに誰でも膵臓の機能が衰え、インスリンの分泌能力が低下します。また年を重ねると筋肉量が減り太りやすくなるため、40歳以上では糖尿病の発症率がさらに高まります。実際、日本でも40代以降では4人に1人が糖尿病または予備軍に該当すると言われています。加齢そのものは避けられませんが、年齢に応じた健康管理が一層重要になります。
- 遺伝的素因: 家族や近い親族に糖尿病の人がいる場合、遺伝的に血糖が上がりやすかったりインスリン分泌が弱かったりする傾向が遺伝することがあります。やはり糖尿病の発症には家族性の要因は関わっていると言えるでしょう。ただし、前述のように遺伝的素因があっても生活習慣しだいで発症を防げるケースは多いです。「遺伝だから仕方ない」と悲観しすぎず、できる対策に目を向けていきましょう。
- その他の要因: 喫煙習慣や過度の飲酒も生活習慣病全般のリスクを高めます。さらに、慢性的なストレスや睡眠不足もホルモンバランスを乱し、過食や不規則な食生活を伴うことに繋がり、血糖値を上げる原因になり得ます。こうした要因が複合的に重なると糖尿病発症のリスクは一段と高まります。
以上のようなリスク要因を多く抱えている人ほど糖尿病になりやすく、逆に言えばそうした要因が少ない人は糖尿病を発症しにくい傾向があります。例えば「肥満で運動不足、かつ甘い飲料も毎日飲みます」という方は今の時点では糖尿病でなくても、注意が必要です。一方、「適正体重を維持していて、バランスの良い食事と運動習慣がります」という方は発症リスクをかなり下げられると言えます。糖尿病になる人・ならない人の差は、このような生活習慣の積み重ねに起因する部分が大きいのです。
しかし、「自分はまさに危ない生活を送ってきた…」と心配になった方もご安心ください。たとえ今リスクが高くても、生活習慣を見直すことで未来の糖尿病発症を防げる可能性は十分にあります。次章では実際のケースを交えつつ、原因から考える健康習慣の改善ポイントを見ていきましょう。
実際の症例:生活習慣の違いで分かれた双子の健康
ここで、僕の過去に経験した患者さんの一例をご紹介します。男性のAさん(55歳)には同い年の双子の兄弟Bさんがいます。遺伝的な素因は共通する二人ですが、生活習慣は対照的でした。Aさんはデスクワーク中心で運動習慣はなく、仕事の忙しさから朝食を抜いて夜遅くにまとめて食べることが多い生活でした。甘いコーヒー飲料を毎日飲み、間食にもお菓子をついつい食べてしまう日々が続いており、体型は身長170cmで体重80kgとBMIは27超と肥満気味でした。一方のBさんは営業職で日頃から歩く機会も多く、夕食後に軽くジョギングをするのが日課です。食事も奥様の影響で野菜中心の家庭料理が多く、間食はほとんど摂りません。体重は同じ身長で65kg前後を維持していました。
そんな二人に50代半ばから明暗が分かれる出来事が起こりました。ある日Aさんは強い喉の渇きと倦怠感を感じ、病院を受診したところHbA1cが8.5%と高値で、2型糖尿病と診断されました。一方、Bさんは直近の健康診断でもHbA1cは5.6%で問題なく、血糖値も正常範囲でした。Aさんは「まさか自分が糖尿病になるなんて」と大きなショックを受け、「同じ遺伝子を持つ兄弟なのに、この差は何だろう」と戸惑いました。
Aさんはこれまでの生活習慣が血糖のコントロール悪影響を与えていました。運動不足や偏った食生活、肥満といった要因の積み重ねが発症の引き金になったこと、逆にBさんは日頃から体を動かし食事にも気を配っていたため発症を免れた可能性が高いことを知り、Aさんは「自分にも生活を変えることで改善できる余地がある」と前向きに受け止めました。
その後Aさんは栄養指導も受け、本格的に生活習慣の改善に取り組みました。まず食事では野菜から食べ始めるいわゆる「ベジタブルファースト」を実践し、夕食後のデザートや間食をできる限り控えました。合わせて通勤時に一駅分余計に歩くことから運動を始め、慣れてきた頃に週2回のウォーキングを追加しました。さらに、
体重減少と血糖改善を促すために主治医からGLP-1受容体作動薬(週1回自己注射を行う糖尿病治療薬)の併用を提案され、Aさんは「注射は少し怖いな」と不安もありましたが治療のために注射薬を開始しました。GLP-1作動薬には食欲を抑えて体重を減らす効果も期待できます。
体重減少効果もある糖尿病治療薬に関してはこちらの記事もご覧ください。
こうした取り組みの結果、3か月後にはAさんのHbA1cは7.0%台に低下し体重も5kg減少、半年後にはHbA1cが6%台まで改善しました。毎回の受診時に院内で迅速に測定するHbA1cの結果を確認しながら指導を受けることで、「前回より良くなった」「もう一息頑張ろう」とモチベーションを維持できたことも継続の助けになったとAさんはおっしゃっていました。現在Aさんは「最初に糖尿病と言われた時はショックだったが、もし悪化していたら心臓病や脳梗塞になっていたかも」と振り返り、早めに対策に踏み切って良かったと安心されています。
このケースは、たとえ
遺伝的な素因があっても生活習慣次第で糖尿病の行方を大きく変えられることを示しています。実際、Aさんのように適切な治療と生活改善によって糖尿病の管理が正常近くまで改善する例は少なくありません。
大切なのは「まだ大丈夫」と先延ばしにせず、思い立った今からできることに取り組むことです。では具体的に、糖尿病を防ぎ健康を維持するにはどのような習慣を心がければ良いのでしょうか。
糖尿病を防ぎ健康を維持するための習慣に関しては以前の「糖尿病は防げる!原因から学ぶ、今日からできる生活改善5選」の記事にまとめてありますので、ご覧ください。
本多内科医院で受けられる専門的なサポート
生活習慣の改善は糖尿病予防に非常に効果的ですが、「自分一人でちゃんとできるか不安」「正しいやり方がわからない」という方もいらっしゃるでしょう。そんな時はぜひ医療機関を頼ってみてください。横浜市神奈川区反町にある本多内科医院では、糖尿病をはじめとする生活習慣病に対してきめ細やかな診療とサポートを行っています。
当院は総合内科専門医・循環器専門医によるクリニックであり、糖尿病の管理から高血圧・脂質異常症の治療、さらには動脈硬化の予防管理まで一貫して対応できるのが強みです。
院内には迅速検査機器を備えており、ご来院当日にHbA1cの測定結果がその場で分かるため、毎回の受診で最新の数値をもとに医師のアドバイスを受けることができます。わずかな採血で数分で結果が出ますので、お忙しい方でも負担少なく検査を継続していただけます。
「前回よりHbA1cが上がっているから食事をもう少し見直しましょう」といった具体的な指導を即日受けられるのは大きな安心につながると考えています。
また当院では、患者様一人ひとりの生活背景に寄り添ったオーダーメイドの指導を心がけています。食事内容の工夫や運動の取り入れ方など、些細なことでも遠慮なくご相談ください。必要に応じて血圧やコレステロール値の管理、
最新の糖尿病治療薬の導入についても専門医が適切に判断しご提案いたします。例えば、前述の症例Aさんのように肥満を伴う糖尿病患者さんに対してはGLP-1受容体作動薬の導入も積極的に行っています。もちろん、薬の力を借りずに糖尿病と付き合っていきたいという方もいらっしゃると思いますので、薬物療法が必要かどうかも含めて一緒に考え、患者様の負担が少なく効果的な治療プランを立ててまいります。
当院は
東急東横線「反町駅」から徒歩4分の場所にあり、
月曜から土曜まで毎日診療しています。
予約不要で受診いただけますので、気になることがあればいつでもお気軽にご来院ください。スタッフ一同、親しみやすく丁寧な対応を心掛けております。
「糖尿病で治療をしているけどなかなか改善しない」「糖尿病と言われたけど、どうしていいか分からない」「もしかして糖尿病かも」「生活習慣を改善したいけど一人では難しい」という方は、どうぞ当院にご相談いただければと思います。
🏥 診療科:内科、循環器内科
🔷 総合内科専門医、循環器内科専門医
📍 Myクリニック本多内科医院(横浜市神奈川区反町4丁目27-1)
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ワクチンの予約に使用できる他、今後多方面での展開を考えております。
監修: Myクリニック本多内科医院 院長 本多洋介