マンジャロの主な副作用とリスク
当院ではマンジャロ(一般名:チルゼパチド)による治療を行っており、血糖コントロールや体重減少に効果を期待しています。
マンジャロは横浜市立大学から報告された日本人の2型糖尿病対象としたGLP-1受容体作動薬(GLP-1製剤)の効果を比較した論文(ネットワークメタアナリシス) で最もHbA1c低下・体重減少効果を示しています。ただし、マンジャロには薬の作用に伴い副作用が現れることもあります。
マンジャロの体重減少効果に関してはこちらの記事も参照ください。
この記事では、マンジャロを使用する際に注意したい主な副作用やリスク、対処法について、糖尿病治療を受ける皆さん向けにわかりやすく解説します。
比較的よく見られる副作用
マンジャロを投与し始めた直後には、いくつかの副作用が比較的頻繁に見られることがあります。しかしこれらは多くの場合、一時的なもので、身体が薬に慣れるとともに徐々に収まっていく傾向にあります。
消化器系の症状(吐き気・下痢など)
マンジャロには胃腸の動きをゆるやかにする作用があります。そのため、投与開始後には胃腸に不調を感じる方が少なくありません。具体的には、次のような症状があらわれることがあります。
- 吐き気・嘔吐: 食べ物や胃液が逆流して気持ち悪くなる感覚や、実際に吐いてしまうことがあります。
- 下痢: 水っぽい便や軟便が頻繁に出ることがあります。下痢の程度は、軽度から中程度であることが多く、数週間で自然に軽快することが多いといわれています
- 便秘: 胃の内容物の排出を遅らせる作用により、便秘の原因となることがあります。
- 腹部膨満感・消化不良: ガスがたまってお腹が張る、食後に胃もたれするなどの感覚が起こることがあります。
これらの症状は、特に投与を始めた時期や用量を増やした直後に起こりやすいですが、多くの場合は軽度で、しばらく服用を続けているうちに改善していきます。むしろ薬に身体が慣れてくれば治まってくることが期待できます。ただし、吐き気や嘔吐、下痢などが激しく続く場合や、普段の生活に支障をきたすほどつらい時は、無理せず当院の医師にご相談ください。医師は必要に応じて用量調整を行う、吐き気止めや整腸剤などで症状を緩和するなどの対処をしています。
低血糖のリスク(他の治療薬との併用時)
マンジャロを糖尿病薬として単独で使用する場合、低血糖のリスクは比較的低い薬剤であるとされています。これは、マンジャロの作用が血糖値に依存しているためで、血糖値が低い時にはインスリンを過剰に出しにくいからです。しかし、スルホニル尿素薬(SU薬)やインスリン製剤など他の血糖降下薬と併用すると、低血糖のリスクは高くなります。これらの薬剤は血糖値に関係なくインスリンを増やしたり、血糖を下げたりする効果があるため、マンジャロと組み合わせると低血糖を誘発してしまう可能性があるからです。
低血糖が起こると、以下のような症状が現れます。
- 冷や汗、手足のふるえ、動悸(脈が早く打つ感じ)
- 強い空腹感
- ふらつき、めまい
- 脱力感、頭痛、集中しづらい
これらの症状を感じたら、すぐにブドウ糖や砂糖を含む飲食物(ジュース、飴、砂糖入りの飲料など)を摂取して、休むことが大切です。血糖値が低くなりやすい状況(食事を抜いた、食事と食事の間隔がいつもより長くなった、激しい運動をしたなど)を避けるようにしましょう。特にSU薬やインスリンと併用されている方は、低血糖の兆候に注意してください。併用薬がある場合は、医師から低血糖時の一般的な症状と具体的な対処方法についてしっかり説明を受けておくと安心です。
重篤な副作用とそのリスク
急性膵炎のリスク
マンジャロを含むGLP-1受容体作動薬では、添付文章によると0.1%未満という頻度ですが、急性膵炎(急激に膵臓が炎症を起こす病気)の報告があります。急性膵炎になると、激しい上腹部(みぞおち付近)の痛みが特徴的で、その痛みが背中に響くこともあります。吐き気や嘔吐、発熱、腹部膨満感を伴う場合もあります。もしこのような症状が現れたら、すぐにマンジャロの使用を中止し、速やかに医療機関を受診してください。膵炎が起きているかどうかは血液検査などで診断され、早めの治療が必要です。過去に急性膵炎を起こしたことがある方、あるいは胆石など膵炎のリスクを高める病気がある方は、マンジャロ投与前に必ず医師にご相談ください。
一方で、2025年に発表されたアメリカの大規模研究では、過去に膵炎を起こしたことのある2型糖尿病や肥満の患者を対象に、GLP-1製剤を使用した場合の「膵炎の再発するリスク」を検討したところ、急性膵炎のリスクは上昇せず、むしろ合併症を伴うような重症膵炎のリスクは減少したと報告(
Gac Sanit. 2025 Jan 15:39:102444.)されており、今後のさらなる研究結果を待つ必要がありそうです。
胆嚢炎・胆石症のリスク
マンジャロ服用による急激な体重減少は、胆嚢(たんのう)に負担をかけ、胆石や胆嚢炎を発症しやすくすると言われています。これらも正確な頻度は不明ですが、添付文書では少なくとも1%未満と報告されています。胆石は胆汁の成分が固まってできる結晶で、胆嚢や胆管に詰まると右上腹部(肋骨の下)の痛みや炎症を引き起こします。また、胆石や胆嚢炎では、発熱や黄疸(皮膚・目が黄色くなる)がみられることもあります。痛みは特に食後に強くなる傾向があります。これらの症状に気付いた場合も、速やかに医師の診察を受けることが大切です。
腸閉塞のリスク
マンジャロは胃の排出を遅らせる作用があるため、ごく稀に腸管の動きが全体的に遅くなり、稀に腸閉塞(腸の通過障害)を起こすことが考えられます。腸閉塞になると、持続する強い腹痛、腹部膨満(お腹がパンパンに張る)、頻繁な嘔吐などが現れ、排便やおならが全く出なくなります。嘔吐や腹痛+排便やおならが出なくなるというのは特徴的な症状です。これらの症状がみられた場合は緊急性が高いため、直ちにマンジャロの投与を中止し、救急医療機関を受診してください。
脱水症状(重度の下痢・嘔吐による)
前述のとおり、マンジャロ服用初期には下痢や嘔吐が起こることがあります。大抵は軽度ですが、これらの症状が激しく頻繁に続くと、体内から水分と塩分が大量に失われ、脱水症状になるおそれがあります。脱水になると、めまい・ふらつき・立ちくらみ、口の渇き、尿量減少、皮膚の乾燥などが起こります。特に高齢の方や腎臓の状態が悪い方は脱水に要注意です。下痢や嘔吐が続く場合は、こまめに水分と塩分(スポーツドリンクなど)を補給し、それでも改善がみられなければ早めに医師に相談しましょう。
使用できない方(禁忌)
マンジャロには、使用してはいけない状態(禁忌)があります。以下のような場合はマンジャロを服用できないため、当院で治療を受けている方は必ずお知らせください。
- マンジャロ成分への過敏症がある方: これまでにマンジャロ(チルゼパチド)または類似成分でアレルギー反応(発疹・かゆみ、呼吸困難など)を起こしたことがある場合。
- 1型糖尿病の方: マンジャロは2型糖尿病治療薬として承認されており、1型糖尿病における有効性・安全性は確立していません。
- 糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡又は前昏睡、重篤な感染症や手術前後、大きなケガなど: インスリン治療が適している状態ではマンジャロを優先的に使用することは行いません。
また、上記以外にも「妊婦または妊娠している可能性のある女性、授乳婦」「重度の腎機能・肝機能障害」、「甲状腺髄様癌(家族歴を含む)」「多発性内分泌腫瘍症2型」の既往や、「急性膵炎や胆石症の既往歴」がある方は、マンジャロの使用に慎重な検討が必要です。ご自身の病歴や家族歴は正確に医師にお伝えください。自己判断で使用・中止することはせず、医師の指示に従いましょう。
ダイエット目的での使用における注意点
マンジャロはもともと2型糖尿病治療薬として承認されており、血糖値のコントロールを主な目的としています。糖尿病治療中に体重が減少する副次的効果が認められたことから、ダイエット目的で注目されるようになりましたが、適応はあくまで「2型糖尿病」の方に限定されています。
糖尿病でない方が体重減少目的でマンジャロを利用する場合、保険適用外の自由診療となり、全額自己負担になります。しかし、自由診療であってもマンジャロは医薬品ですので、副作用や重篤なリスクは同じように存在します。使用を検討される際は、必ず医師の診察を受け、自分の健康状態に合った治療か、期待できる効果とリスクを十分に理解した上で進めることが重要です。
個人輸入サイトなどで医師の処方なくマンジャロを入手・使用するのは非常に危険です。マンジャロは必ず、医師の診察のもとで正規ルートから入手してください。
一方で「ゼップバウンド」というマンジャロと同成分の薬剤が「肥満症」の治療薬として日本でも承認されました。肥満症を保険診療として治療するにはいくつか必要な条件がありますので、こちらの記事もご覧ください。
当院に受診して頂ければ、保険診療としての診療が可能か判断させて頂きますし、必要な検査があれば提案いたしますので、お悩みの方は是非一度ご相談ください。
使用中止後の変化とリバウンドの可能性
マンジャロ治療を中止すると、これまでマンジャロによって得られていた効果は徐々に失われていきます。血糖コントロール面では、薬をやめると血糖値が再び上がりやすくなる可能性があります。中止後は血糖値の推移を注意深く見守り、必要に応じて他の糖尿病治療薬に切り替えたり、食事や運動などの生活習慣を見直したりする必要があります。
また、マンジャロには食欲を抑える作用もあるため、服用中は食べ過ぎを防げていましたが、中止するとその効果がなくなり、元の食欲に戻るか、それ以上に増すことがあります。その結果、せっかく減った体重が元に戻ってしまう「リバウンド」が起こる場合があります。マンジャロ治療で減量できた方も、治療終了後は引き続き食事管理や運動習慣を維持することが大切です。マンジャロ中止後の体重変化に関してはこちらの記事もご覧ください。
自己判断で急に中止するのは避けましょう。服用の変更や中止を考える際は、必ず当院の医師に相談し、今後の治療方針について十分に話し合ってください。
マンジャロ使用上の注意点
- 体調の変化に注意する: 服用中は前述のような副作用の症状や、いつもと違う体調の変化に気づいたら軽く考えず医師に相談してください。特に、激しい腹痛や止まらない嘔吐、意識障害など重篤な症状が疑われる場合は、すぐにマンジャロの使用を中止し、必要に応じて救急医療機関を受診しましょう。早めに対処することで大きなトラブルを避けることができます。
- 他の薬剤との相互作用: マンジャロは他の薬と組み合わせたときに、互いの効果や副作用に影響を与える可能性があります。特に、前述のようにSU薬やインスリン製剤など他の血糖降下薬との併用は低血糖リスクを高めますので、併用する場合はこれらの薬の用量調整が必要になることがあります。また、マンジャロは胃腸の動きを遅らせるため、同時に服用した経口薬の吸収時間が遅くなる可能性があります。これにより、他の薬の効果発現が遅れたり、効き方が弱くなる場合があります。マンジャロ開始時には、現在飲んでいる薬やサプリメント・健康食品などを必ず医師・薬剤師に伝え、相互作用のリスクを確認してから治療を進めてください。
- 定期的な診察・検査の重要性: マンジャロ投与中は定期的に医師の診察や血液検査を受けることが欠かせません。血糖値や体重の変化をチェックし、副作用の兆候がないかを早めに発見するためです。自己判断で薬の量を増減したり中止したりすると、血糖コントロールが乱れたり予期せぬ副作用が出るリスクがあります。必ず医師の指示に従い、計画的に治療を進めましょう。
気になることがあれば医師への相談を
マンジャロは2型糖尿病の治療に大きな効果を発揮しますが、その分、副作用への配慮も重要なお薬です。当院の患者様でも、マンジャロ治療で血糖コントロールや体重管理に良い成果を上げている方が多くいらっしゃいます。一方で、体調の変化に不安を感じることもあるかと思います。
マンジャロの使用を検討中の方、あるいは現在服用中で気になる点がある方は、どうぞお気軽に当院の医師にご相談ください。皆さんの健康状態やご希望を踏まえ、マンジャロが適切かどうか、どのように使えばより安全かを丁寧にご説明いたします。
ここで紹介した情報は一般的なものであり、適切な治療方針は患者様ごとに違っていることが一般的ですので、治療方針は必ず医師と相談して決める必要があります。
皆さんが安心して治療に取り組めるよう、当院スタッフ一同しっかりサポートいたします。
📍 Myクリニック本多内科医院(横浜市神奈川区反町4丁目27-1)
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監修: Myクリニック本多内科医院 院長 本多洋介