その動悸、ストレスのせいかも? ― 不整脈の原因と正しい対処法を医師が解説
ストレスと不整脈 -動悸の原因と対処法-
近年、仕事や生活上のストレスで心臓の不調を感じる方が増えています。
たとえば、横浜市内にお住まいの40代女性Aさんは、部署が変わった後、仕事の忙しさから慢性的な疲労とストレスを抱え、ある日突然「胸が一瞬ドキンとする」「脈が飛ぶような」動悸を覚えて当院を受診されました。
Aさんはホルター心電図などの詳しい検査で「期外収縮」と診断されました。仕事が忙しくなったタイミングで不整脈による自覚症状が出現しており、典型的なストレスによる心拍の乱れ(不整脈)のケースと判断しました。どのような仕組みでストレスが不整脈を引き起こし、放っておくとどうなるのか、そして対処法にはどのようなものがあるのか――今日はその理由と対策について詳しくお話しします。
ストレスが不整脈に与える影響
ストレスが過剰になると、身体の中でアドレナリンというホルモンが分泌される、自律神経のバランスが乱れる、などの理由により交感神経が優位になります。その結果、心拍数が増加し、心臓の電気的刺激が起こりやすくなります。強いストレスがかかったり、長期間ストレスが続いたりすると、この交感神経の緊張状態が続き、不整脈が起こりやすい状態になります。Aさんの場合も、慢性疲労と心理的ストレスの影響で交感神経が活性化し、心臓のリズムが乱れて動悸が生じていました。こうした不整脈の多くは心臓病などの重大な病気とは関係ないことが多いですが、不整脈の症状がさらにストレスを悪化させる、悪循環に陥り、さらなる心身の体調不良を招くことがあります。
ストレスと関連しやすい不整脈
ストレス下でよくみられる不整脈には、いわゆる「脈が飛ぶ」「ドキッとする」という感覚を伴う期外収縮があります。期外収縮は健康な人でも起こりうる一過性の不整脈で、実際に検査すると成人の8~9割の方に生じていることがわかっており、1日に100回程度は正常範囲と考えて差し支えありません。
電気的ない刺激が出る場所によって、上室性期外収縮と心室性期外収縮に分類されます。上室性期外収縮は問題ないことが多いですが、連発する場合は心房細動などの不整脈が隠れている場合があります。心室性期外収縮に関しては右脚ブロックや左脚ブロックなどいくつかのパターンがあり、パターンによっては心臓に病気がないかどうかを早めに検査したほうが良い場合があります。左脚ブロックを指摘された場合には狭心症や心筋症などが存在する可能性があるため、心臓の検査を早急にすることをお勧めします。
Aさんのようにストレスを抱えた方では、この期外収縮が増えやすい傾向があります。一方、心房細動(しんぼうさいどう)という不整脈は、脈拍が不規則になる不整脈で、頻脈になることがあります。若年者の方でも過労や強い精神的緊張で誘発されることがあります。心房細動は心不全や脳梗塞などの合併症リスクが高い不整脈であるため、特に注意が必要です。そのほか、精神的・肉体的ストレスや興奮時には、発作性上室性頻拍など、一時的に脈拍が速くなる不整脈が生じる場合もあります。これらも動悸として自覚することが多い不整脈の一つです。どの不整脈が原因であるかは心電図を施行して確認する必要があるため、24時間の心電図を記録するホルター心電図などの検査を行い、確定診断を行っていきます。
※心房細動の説明に関してはこちらもご覧ください。
不整脈を放置するとどうなる?
多くのストレス性不整脈は命にかかわるものではありませんが、放置すると状態が悪化することがあります。心房細動があると、心房の動きが不規則になるため、心房の中で血液の流れが滞りやすくなります。心房の中でも特に「左心耳」という部分に血液がよどみ、血のかたまり=血栓ができやすくなります。また心房細動が続いて脈が速い状態が続き、心臓に負担がかかると、心不全に至ることもあります。
動悸などの症状がある場合には心房細動を除外しておくことは非常に重要です。軽い不整脈だからと自分で判断したり、軽視したりするのは避けましょう。動悸の頻度が増えたり強く感じたりする場合は注意が必要です。Aさんも初診時に「様子を見ていたが、最近では立ち仕事中に目眩(めまい)を感じるようになった」と話しており、受診されました。日常生活は続けられても、放置することで思わぬ合併症、状態の悪化を招く恐れがあるため、自覚症状がある場合は早めの診察・検査をおすすめします。
受診のタイミング
動悸や不整脈の症状があるとき、どのような場合に受診すべきでしょうか。短時間で治まる軽い動悸で他の症状がなければ、少し様子を見ていただいて問題ありません。
しかし以下のような場合は早めに専門医に相談しましょう:
- 動悸が激しくて続く
- 胸部に痛みや不快感がある
- 立ちくらみ、めまい、息切れ、失神などを伴う
- 普段運動習慣がないのに動悸が起こる
- 既に心臓病や生活習慣病(高血圧、糖尿病など)を指摘されている
Aさんの場合、動悸に加えて目眩が出てきたため不整脈の精密検査が必要と判断し、24時間心電図検査(ホルター)で状態を確認しました。日常的に動悸を感じる方や、ストレスが多い生活で不安がある方は、一度専門医に相談してみてください。
自宅でできる対処法
動悸を感じたとき、自宅でできるセルフケアもあります。安全を確認できる範囲で次のような方法を試してみましょう:
- 深呼吸してリラックスする : 胸がドキドキしてきたら、椅子に腰掛けてゆっくりと深呼吸を数回繰り返しましょう。副交感神経が働き、脈拍が落ち着くことがあります。
- 十分な休息・睡眠 : 睡眠不足や疲労は交感神経を刺激するため、質の良い睡眠と休息を心がけましょう。
- カフェイン・アルコール摂取の制限 : コーヒー、エナジードリンクなどのカフェインやアルコールは交感神経を活性化し、不整脈を誘発することがあるため、摂り過ぎに注意しましょう。
- 適度な有酸素運動 : 散歩やストレッチ、軽い運動は自律神経のバランスを整え、ストレスを解消します。激しい運動は逆効果なので、無理ない範囲で続けましょう。
- ストレスの軽減 : 趣味やリラクゼーションで気分転換することも大切です。散歩やヨガ、深呼吸、マッサージなどで緊張をほぐしましょう。仲の良い人とコミュニケーションをとることも良いかもしれません。
上記の対処法で症状が改善するか様子を見つつ、運動や休息で体調を整えましょう。ただし、動悸が急激にひどくなったり、胸痛・呼吸困難を伴う場合は自分での対処をせず、早急に医療機関を受診してください。
当院での検査・診療
動悸に対する診断方法とアプローチ
動悸の診断は問診を丁寧に行うことが非常に重要です。多くの場合、症状の出現の仕方・タイミングを伺うことにより、推測が可能です。一般的な診断の流れは以下になります。
- 詳細な問診と既往歴の確認
症状のタイミング 動悸が強く感じられるのが運動中なのか、安静時なのか、もしくは夜間なのかなど、状況を詳しく聞き取ります。
既往症のチェック 高血圧、糖尿病、過去の心疾患など、患者さんのこれまでの病歴をまずは把握します。
生活習慣や精神状態の把握 カフェイン摂取量、アルコールの習慣、さらにはストレスの状況も重要な評価項目です。お酒を飲んだ日にだけ症状を感じる方も中にはいらっしゃいます。
- 身体検査
心臓・血管の評価 触診、視診、聴診を通じて、心雑音や不整脈の有無を確認します。
- 画像や血液学的検査
心電図(ECG) 不整脈や心筋虚血の所見を捉えるために欠かせない検査です。自宅での心電図の確認、症状出現時の心電図を確認するために、24時間のホルター心電図を行うこともあります。
血液検査 血清カリウム値や甲状腺機能の評価を行います。場合によっては副腎皮質ホルモンのチェックなども行います。
心臓超音波検査 心臓の機能、弁膜症の有無などをチェックします。心臓超音波検査で明らかな異常が無ければ致命的な疾患である可能性は少し下がるため、必須の検査と言えます。
問診を行い、まずは心電図や心臓超音波検査で器質的な異常の除外、緊急性の有無の判断を行います。その後採血で甲状腺機能や電解質などを評価し、ホルター心電図などで実際の不整脈を特定するというものが当院での検査の主な流れになります。
※動悸の説明に関してはこちらもご覧ください。
まとめ
不整脈はストレスが原因で起こることもありますが、ストレスというものは数字で測ることが出来ません。危険な不整脈の除外を行い、不整脈の原因となるような病気が無いことを確認することで、初めてストレスが不整脈の原因になっていると判断が可能になります。
当院の専門医が丁寧に診察・検査を行い、一人ひとりの状態にあわせた治療・生活指導をご提案します。ストレスが原因で不整脈が生じているかもしれないと思われる方には、まず生活習慣の見直しをお勧めしつつ、必要な検査・治療を進めますので、ご安心ください。
不整脈や動悸でお悩みの方は、横浜市神奈川区の本多内科医院までお気軽にご相談ください。
🏥 診療科:内科、循環器内科
🔷 総合内科専門医、循環器内科専門医
📍 Myクリニック本多内科医院(横浜市神奈川区反町4丁目27-1)
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監修: Myクリニック本多内科医院 院長 本多洋介