チルゼパチド(ゼップバウンド)と肥満外科手術の比較 ~当院での肥満症治療について~
はじめに
肥満症は、見た目だけの問題ではなく、高血圧、脂質異常症、2型糖尿病などの生活習慣病と深く関わる疾患です。放置すれば、心臓病や脳卒中、さらには慢性腎臓病やがんのリスクも高まります。近年、肥満症に対する治療は大きく進歩しており、中でも注目されているのが「ゼップバウンドを始めとする注射薬」とと、外科的治療である「肥満外科手術」です。
この記事では、それぞれの治療法の特徴や効果を比較しつつ、当院で行っている肥満症治療についてもご紹介いたします。
※ゼップバウンドはチルゼパチドという薬で肥満症の適応となるのはゼップバウンド、糖尿病薬として適応があるものがマンジャロという形になります。製剤名は違いますが、成分は同じものになります。
ゼップバウンドとは?
ゼップバウンドは、週に1回皮下注射で投与するGLP-1/GIP受容体作動薬です。これらは「インクレチン」と呼ばれる消化管ホルモンで、食欲を抑え、血糖値を下げ、脂肪代謝を改善する作用があります。
米国での肥満治療試験(SURMOUNT-1)では、チルゼパチド15mg群で72週後の平均体重が約25%減少し、10mg群でも約20%減少しました(5%以上減少者割合はそれぞれ94.9%/96.9%)。さらに72週時点で10mg投与群の88.1%、15mg群の92.3%が10%以上減量し、15mg群では66.2%が20%以上の減少を達成しています。これは、薬物治療としてはこれまでにない高い効果を示しています。また、糖尿病や高血圧、脂質異常症などの合併症に対しても改善効果が確認されています。
※チルゼパチドの体重減少効果に関してはこちらもご覧ください。
ゼップバウンドの利点
- 非侵襲的で外来通院のみで治療が可能
- 食欲抑制と代謝改善を同時に実現
- 生活習慣病(高血圧、脂質異常症、糖尿病)の管理にも有用
- BMIが25~35程度の肥満にも適応可能
注意点
- 悪心や便秘などの消化器症状が一時的に見られることがあります
- 自己注射が必要→こちらに関しては看護師からの指導により、多くの方が問題なく継続されています
肥満外科手術とは?
肥満外科手術には主に「スリーブ状胃切除術(LSG)」や「ルーワイ胃バイパス術(RYGB)」があり、いずれも腹腔鏡下で行われるため、身体への負担は以前より軽減されています。食事量の制限や吸収の抑制を目的としており、10年以上にわたり体重を大きく減らす効果が期待できます。
手術の利点
- 非常に高い体重減少率(20~30%以上)
- 糖尿病や高血圧が劇的に改善・寛解する例も多い
- 長期的に減量効果が維持されやすい
注意点
- 全身麻酔を伴う手術であり、入院や術後の生活制限が必要
- 胃酸逆流や栄養不足など、術後管理が求められます
- BMI35以上、または32以上で重度の合併症がある方が主な対象
治療選択の目安
治療法の選択にはBMIや合併症の有無が重要です。
- 薬物療法(ゼップバウンド):肥満症(BMI≧25kg/㎡かつ肥満関連合併症がある状態)で食事・運動療法が不十分な場合に検討します。米国の試験ではBMI27以上で脂質異常や高血圧など2つ以上の合併症がある方が対象としていました。日本では医師が肥満症と診断された場合に適応となります。※肥満症の薬物治療の適応はこちらもご覧ください。
- 外科手術:日本肥満症治療学会ガイドラインでは、減量目的ならBMI35以上、合併症改善目的ならBMI32以上を主な適応基準としています。年齢は18~65歳が基本で、内科治療で十分な効果が得られない場合に手術を検討します。手術適応を満たす方には外科専門医との連携を行い、内科的・外科的双方の観点から治療方針を決めていきます。
以上を踏まえ、肥満治療は生活習慣の改善、栄養指導をベースとして行い、ゼップバウンドなど薬物療法で効果を見ながら、必要に応じて外科治療も検討します。
ゼップバウンドと手術の比較
ゼップバウンドは、外科手術に比べて身体的・心理的負担が少なく、日常生活を大きく変えずに続けられるのが特徴です。体重の減少幅こそ手術に及ばないこともありますが、糖尿病や脂質異常症の改善効果は非常に高く、現在、肥満症の治療の第一選択肢として注目されています。
当院での取り組み
当院では、肥満症に対して以下のような診療を行っております。
患者様の体質や生活環境、ご希望を丁寧に伺いながら、最適な治療法を一緒に検討いたします。
おわりに
肥満症は、ただ「やせればよい」という問題ではありません。身体と心の両方に影響を及ぼす病気であり、専門的なサポートが必要です。特に生活習慣病を合併する方にとっては、適切な減量と代謝改善が健康寿命を大きく左右します。
当院では、最新の情報を取り入れ、治療を安心して受けていただける体制を整えております。ゼップバウンドのような新しい薬物治療に興味のある方、手術を受けるべきか悩んでいる方も、まずはお気軽にご相談ください。
あなたの体と生活に合った「最善の選択」を、私たちと一緒に考えていきましょう。
📍 Myクリニック本多内科医院(横浜市神奈川区反町4丁目27-1)
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監修: Myクリニック本多内科医院 院長 本多洋介