浮腫 その2|“ただのむくみ”が命に関わる病気だった話
〜心臓・腎臓・肝臓の異常を見逃さないために〜
🧍♂️「足のむくみ」はよくあること?いいえ、油断は禁物です
「夕方になると足がパンパンになる」
「靴がきつくなってきた気がするけど、年のせいかも…」
「歩くと足が重だるい…でも特に痛くはないし」
このような「足のむくみ」の悩みは、当院でも多くの患者様からご相談を受けます。中には一過性の生理的なむくみもありますが、中には重大な病気のサインであることもあるため、見逃すことはできません。
「足のむくみが気になる方へ|考えられる原因と見逃せない病気とは?」はこちらをご覧ください。
今回の記事では、実際に当院で診察した4名の患者様のケースをご紹介します。
いずれも、むくみをきっかけに当院を受診され、重篤な病気が見つかり、早期の対応が可能となった例です。
🩺 症例1|狭心症が原因の心不全
🔍 症状と来院のきっかけ
70代の男性。
「ここ最近、靴が夕方になるときつくなるんです」と相談に来られました。
むくみは両足に出ていて、朝は少し軽くなるものの、夕方にはかなりパンパンになるとのこと。
また、最近になって階段を上がると以前よりも息切れがするようになり、奥様と比べても体力が落ちた気がする、近所の散歩が億劫に感じることも増えてきたと話されていました。
🧪 診断結果:重度の狭心症により、心不全を起こしていました
心電図と心エコー検査を行ったところ、心電図では狭心症や心筋梗塞を疑う所見を認め、心エコー検査では心臓の筋肉の動きが全体的に落ちており、一部とても動きが悪くなっているところがありました。このような状況では心臓に栄養を送っている冠動脈という血管が狭くなったり、詰まったりしている状態を疑います。
心臓カテーテル検査が可能な病院に紹介状を作成し、受診していただきました。
精密検査の結果、心臓の冠動脈に狭窄(狭くなっている部分)と閉塞(詰まっている部分)があることが分かり、重度の狭心症を原因とした心不全と診断しました。心臓カテーテル治療(経皮的冠動脈形成術)を受けて頂き、内服薬の調整を行い、現在は外来に元気に通院して頂いています。
💬 専門医のひとこと
「狭心症=胸の痛み、苦しさ」だけではありません。
動くと息切れする、むくみが出てきた、体重が増えた…そうした小さな変化が、心臓からのSOSである可能性もあるのです。心不全には様々な原因がありますが、今回は重度の狭心症を原因とした心不全でした。心不全は悪化すると、苦しくて横になれないという症状、不整脈や呼吸状態の悪化による突然死の原因ともなる病気です。
🩺 症例2|大動脈弁狭窄症が原因の心不全
🔍 症状と来院のきっかけ
80代の女性。糖尿病で近医に通院中の方でした。
「最近、歩いていると息が苦しくなって、つい立ち止まってしまうんです」
それに加え、両足にむくみが出て、夕方には靴下の跡がくっきり残るようになったと話されました。
息切れがひどくなる日もあり、「年のせいと思っていたけれど心配になって」とおっしゃっていました。
当院の「息切れ外来」を見て受診してみようと思って頂けたとのことでした。
🧪 診断結果:大動脈弁狭窄症による心不全
聴診を行ったところ、強い収縮期雑音が聞こえました。胸骨右縁第二肋間で聞こえる典型的な心雑音であったため、すぐに心エコー検査(心臓超音波検査)を行ったところ、大動脈弁が動脈硬化により硬くなり、弁がほとんど開かなくなっていることが判明しました。
心臓から送り出される血液の流れが妨げられ、心臓に大きな負担がかかることで、心不全を起こしむくみや息切れを生じていました。
💬 専門医のひとこと
高齢者に多い「大動脈弁狭窄症」は、初期症状が分かりづらいため見逃されやすい疾患です。ゆっくり進行することも多い為、症状が目立たないケース、「年のせい」だと思っていましたというケースがとても多いです。
むくみや息切れ、ふらつきなどが重なるようなら、弁膜症の可能性も視野に入れて検査が必要です。聴診をして、心雑音が聞こえたら心エコー検査を行い、確定診断を行います。
この患者さんは胸を開いて行う開胸手術は行わず、経カテーテル的大動脈弁植え込み術(TAVI)というカテーテルを使って生体弁を植え込む治療を受けていただき、現在も外来に通院して頂いております。
TAVI (経カテーテル的大動脈弁留置術) は、日本では2013年10月より公的医療保険で手術可能となり、患者さんの負担が少ないことから、高齢者など手術が困難な方でも選択肢となる治療法として普及しています。良好な成績が報告され、元々は外科手術が困難な患者さんのみが適応となっていましたが、現在は適応が広がり、多くの患者さんにおいてTAVIによる治療が可能となっています。
TAVIなどの弁膜症治療に関しては連携病院である済生会横浜市東部病院の下記のページも参照ください。
🩺 症例3|糖尿病性腎症による全身のむくみ
🔍 症状と来院のきっかけ
60代の男性。
もともと糖尿病がありましたが、忙しさを理由に通院を中断して数年が経過していました。最近になって「顔がむくんでると言われた」「尿が泡立つ」と感じて来院されました。
足のむくみも徐々に強くなり、夕方には足がパンパンになり、靴も履けないほどでした。体重も2週間で3kg近く増えていました。
🧪 診断結果:糖尿病性腎症の進行
血液検査と尿検査を行ったところ、腎臓の機能がかなり低下しており、尿には大量のタンパクが出ていました。
この患者さんは糖尿病性腎症を原因としたネフローゼ症候群に至っており、体に水分が溜まりやすくなっていたのです。
ネフローゼ症候群とは、尿にタンパクがたくさん出てしまうために、血液中のタンパクが減り(低たんぱく血症)、その結果、むくみ(浮腫)が起こる疾患です。 むくみは、低タンパク血症が起こるために血管の中の水分が減って血管の外に水分と塩分が増えるために起こります。
糖尿病性腎症は成人のネフローゼ症候群の最も一般的な原因です。また、糖尿病性腎症は米国での末期腎不全の最も一般的な原因でもあると言われています。
当然、糖尿病の数値も悪くなっており、入院しての血糖管理が必要となりました。
💬 専門医のひとこと
糖尿病が長く続くと、腎臓にダメージが蓄積され、やがて「むくみ」や「尿の異常」といった形で現れます。そして積み重なったダメージは元に戻らないことが多いです。
糖尿病の適切な管理を行うことで、腎臓を始めとした他の臓器への悪影響を防ぐことが可能になります。
糖尿病性腎症は放置すると透析が必要になる可能性もあるため、糖尿病のある方にむくみが現れた際には、受診をお勧めします。
この患者さんは内服薬、インスリン製剤による糖尿病の管理を行いながら、総合病院の腎臓内科で定期的な経過観察を受けて頂いております。
🩺 症例4|アルコール性肝炎から肝硬変へ
🔍 症状と来院のきっかけ
50代の男性。
「最近、足がむくんでお腹が張ってきた」と来院されました。
体重は増えているのに、顔はやつれて、ご年齢より歳が上のように見受けました。お腹を診察すると、大量の腹水(お腹に水が溜まる)があることがわかりました。
過去には健康診断で肝機能異常を指摘されていましたが、飲酒の習慣(毎日ビール2L以上)をやめておらず、最近は健康診断も受けていないとのことでした。
🧪 診断結果:アルコール性肝障害による肝硬変
血液検査と腹部エコー検査で、肝機能の重度低下と肝硬変の所見が確認されました。
肝炎やその他の肝硬変の原因となる病気は否定的な状況であり、アルコール性肝障害を原因とする肝硬変と診断しました。
長年のアルコール摂取により、肝臓がダメージを受けることで線維化し、アルブミンを合成する機能が低下していたのです。そのため、血液の浸透圧が低下し、血管から水分が漏れ出し、腹水や浮腫などが起こっていました。
日本においてアルコール性肝障害の有病率は増加傾向であり,肝硬変の成因別頻度においてアルコール性はウイルス性に次いで約20%を占めると言われています。
💬 専門医のひとこと
むくみは「肝臓からのSOS」であることもあります。特に、足のむくみ+お腹の張り+黄疸(肌や白目が黄色い)が揃った場合は、すぐに病院での検査が必要です。
この患者さんは総合病院の消化器内科に紹介状を作成しました。胃カメラを行ったところ、食道静脈瘤もあったため、食道静脈瘤に対する硬化療法なども受けて頂きました。その後、体力の低下、腹水により通院が困難となったため、現在は訪問診療という形で診させて頂いています。
✅ ご自宅でできるむくみ対策
- 足を高くして寝る→寝るときはクッションなどを使って足を心臓より高く。むくみが軽くなることがあります。
- 適度な運動を習慣に→ウォーキングやふくらはぎの体操は血流改善に効果的です。
- 弾性ストッキングを活用→医療用ストッキングはむくみの改善に役立ちます。使用が適さない場合もあるますので、使用の際には一度ご相談ください。
- 塩分を控える→味噌汁・漬物・加工食品の摂りすぎに注意しましょう。
- 飲酒を見直す→特に肝臓疾患のリスクがある方は、節酒・禁酒が重要です。
🔎 こんなむくみ、受診のサインかも?
- むくみが1週間以上続いている
- 息切れ・胸の苦しさを伴う
- 朝、顔やまぶたが腫れている
- 尿が泡立つ・尿の量が少なくなった
- お腹が張ってきた、体重が急に増えた
- 家族や知人に肌や白目が黄色いと言われた(黄疸)
- 片足だけが赤く、急に腫れて痛い
🏥 当院で行える検査・対応(予約不要)
- 血液検査:腎機能、肝機能、心不全マーカー(BNP)など
- 尿検査:タンパク尿・血尿のチェック
- 心電図・心臓超音波検査(心エコー)による弁膜症や心不全の評価
- 腹部エコー(肝臓・腹水の確認)
- 血管エコー(深部静脈血栓症の検査)
- 胸部レントゲン(心拡大・胸水の確認)
✨ まとめ|むくみは体からの「重大なサイン」
「ただのむくみだと思っていたら…実は心不全・腎臓病・肝臓病だった」
これは決して特別なことではありません。
貴方のむくみは体の臓器が悲鳴をあげているサインかもしれません。
体の声に耳を傾け、早めの受診・検査を心がけましょう。
「むくみが気になるけど病院に行くほどじゃないかな…」
そう思ったら、まずはお気軽にご相談ください。
地域のかかりつけ医として、私たちが全力でサポートいたします。
🏥 診療科:内科、循環器内科
🔷 総合内科専門医、循環器内科専門医
📍 Myクリニック本多内科医院(横浜市神奈川区反町4丁目27-1)
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ワクチンの予約に使用できる他、今後多方面での展開を考えております。
監修: Myクリニック本多内科医院 院長 本多洋介