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【医師が解説】浮腫 その4 在宅・高齢者に多い“慢性的なむくみ”との付き合い方

浮腫 その4 在宅・高齢者に多い“慢性的なむくみ”との付き合い方

「いつも足がむくんで重だるい」「一日中靴下の跡が残っている」——在宅療養中の高齢患者さんや、そのご家族・介護者の皆様から、こうした慢性的な足のむくみについてご相談を受けることがよくあります。
年齢を重ねれば誰にでも起こりうる症状ですが、長い間続いているむくみは油断できません。放置すると生活に支障をきたしたり、重大な病気を見逃す恐れもあります。
今回は、循環器内科専門医の視点から、慢性的なむくみの基礎知識や原因、在宅での対策、さらに当院で提供できる検査・治療まで、私が実際に経験したケースを交えながら丁寧に解説いたします。

足の浮腫の画像

実際の浮腫の画像


慢性的なむくみとは何か?〜まずは基礎知識をつけましょう〜

むくみ(浮腫)とは、体内の余分な水分が血管の外に染み出し、皮下に溜まっている状態です。慢性的なむくみとは、夕方だけではなく常に足がむくんでいる状態や、何日も続いてなかなか引かないむくみを指します。
加齢に伴う筋力低下や生活習慣の変化により、重力の影響で特に足首やふくらはぎに生じやすく、指で押すと凹みが残るのが特徴です(押した跡が10秒以上戻らない場合、むくみがある状態です)。
慢性のむくみはゆっくり進行するため、ご本人も周囲も見過ごしがちですが、悪化すると皮膚がパンパンに張って痛みを伴い、歩行困難や転倒リスクの増大にも繋がります。


慢性的なむくみを引き起こす身近な原因

特に体調変化がないのに慢性的なむくみがある場合、日常の習慣や加齢による体の変化が影響していることが少なくありません。以下のような原因で、高齢者では慢性のむくみが起こりやすくなります(これらが原因の場合、検査をしても明らかな異常が見つからないこともあります)。

  1. 筋力の低下と活動量の減少: 年齢とともに足腰の筋肉が衰え、心臓に血液を送り返すポンプ機能が弱くなります。特に「ふくらはぎ」は第二の心臓とも呼ばれますが、その筋力低下により血液やリンパ液が下肢に滞りやすくなります。また、関節痛や麻痺がある方では歩行が不十分になり、筋肉のポンプとしての作用がさらに低下してむくみが生じやすくなります。

  2. 長時間同じ姿勢(座位・立位): 自宅でテレビを見ながら椅子に座ったまま過ごす時間が長かったり、逆に台所仕事などで長時間立ちっぱなしになったりすると、血液が足に溜まりやすくなります。高齢になると一つひとつの動作に時間がかかるため、知らないうちに長時間同一姿勢を続けてしまいがちです。その結果、下肢の血流が滞って慢性的なむくみの原因となります。

  3. 塩分の摂りすぎ: 塩分(ナトリウム)の多い食事は体内の水分バランスに影響し、水分をためこみやすくします。高齢の方は味覚の変化などから塩辛い食事を好む傾向がありますが、濃い味の味噌汁や漬物、インスタント食品ばかりの食事はむくみを悪化させる原因になります。塩分制限は高血圧予防にもなるため、むくみが気になる方は日頃から減塩に努めましょう。


病気が潜む場合も…見逃せない慢性むくみの原因

慢性的なむくみの背後に、治療が必要な病気が隠れていることもあります。「年のせいだから仕方ない」と決めつけず、以下のような疾患の可能性も念頭に置きましょう(左右両足に出る場合と片足だけの場合があります)。

  1. 心臓の機能低下(慢性心不全など)
    心臓のポンプ機能が弱まる慢性心不全では、全身に十分な血液を送り出せず、血液が体にうっ滞して両足のむくみが生じます。高齢者では大動脈弁狭窄症などの弁膜症や長年の高血圧による心臓肥大などで心機能が低下し、徐々に足がむくんでくるケースがよくあります。特徴的な症状として、両足のむくみのほか、体重増加、横になると息苦しい(夜間の呼吸困難)、少し動くと息切れするといった症状を伴うことがあります。

  2. 腎臓の機能低下(慢性腎不全など)
    腎臓は血液中の老廃物と余分な水分を尿として排泄する臓器です。慢性的な腎機能低下があると水分をうまく排泄できず、体内に水分が貯留してむくみが出ます。特にまぶたや顔、足にむくみが現れやすく、朝起きたときにまぶたが腫れている場合は腎機能低下を疑います。また尿にタンパクが漏れるネフローゼ症候群でも全身のむくみを生じます。特徴として尿の泡立ちや尿量減少、原因不明の体重増加が見られます。

  3. 低栄養・肝臓の病気
    高齢者では食欲低下や偏食により低栄養状態になることがあります。肝臓で作られるアルブミン(血液中のタンパク質)が不足すると、血管内の水分を保つ力が弱まり、水分が血管外に漏れ出しやすくなります。その結果、足のむくみや腹水(お腹に水が溜まる)が起こります。大量の飲酒歴による肝硬変でもアルブミンが低下しむくみやすくなります。特徴的な症状は、足首やすねのむくみに加え、腹部膨満(腹水)、食欲不振や体重減少などがみられます。

  4. 下肢の血管・リンパの問題
    足の静脈やリンパ管の流れが障害されると、慢性的な片足のむくみが現れます。下肢静脈瘤(足の静脈がコブのように膨らむ)では、血液が逆流して足に溜まりむくみ・だるさを感じます。また、深部静脈血栓症(エコノミークラス症候群)は急な発症経過であることが多いですが、治療後も片脚に血液のうっ滞が残り慢性的なむくみにつながることがあります。

▶ 在宅診療で介入している患者さんの実際のケース

80代の要介護女性で、数ヶ月にわたり両脚のむくみが続き、ご家族は「年だから仕方ない」と思っていました。往診で診察するとご本人の嗜好から食事内容が極端に偏っており、栄養状態が悪く低アルブミン血症による浮腫が疑われました。さらにカルシウム拮抗薬(降圧薬)の副作用も影響していると考えました。幸い重篤な心疾患や血栓はなく、利尿剤の調整と食事指導に加え、降圧薬を変更したところ、約2週間で足のむくみが大幅に軽減しました。患者様も「足が軽くなった」と喜ばれ、ご家族も安心されたケースです。
カルシウム拮抗薬による浮腫は見落とされやすい浮腫みの原因ですので、高血圧で加療中の方の浮腫みを診る時は念頭に置いて考えています。


どのような時に受診すべきか?〜慢性のむくみでも油断せず〜

以下のようなケースでは、慢性的なむくみでも医療機関での検査を検討してください。

  • むくみが1週間以上続いている

  • むくみ部分に痛みや熱感がある、または左右で差がある

  • 息切れ、動悸、倦怠感など他の症状を伴う

  • 足だけでなく顔や手にもむくみが出ている

  • 朝起きたときにまぶたが腫れている

特に基礎疾患(心臓病、腎臓病、糖尿病など)がある方や、要介護で自力受診が難しい方は、ご家族や介護者が異変に気付き次第、早めに主治医に相談しましょう。


自宅でできる慢性むくみ対策

慢性的なむくみと上手に付き合うには、日々のケアが大切です。ご自宅や施設で実践できるむくみ予防・改善策を紹介します。

  1. 足を心臓より高くする
    座る時や寝る時にクッション等で足を心臓より高い位置に上げましょう。重力を利用して足の余分な水分を心臓に戻し、むくみ軽減に役立ちます。

  2. こまめな足の運動:
    筋肉を動かして血流を促すことがむくみ対策の基本です。無理のない範囲で適度な運動を習慣にしましょう。歩行が難しい方も、椅子に座ったまま足首の上下運動や、ベッド上で足の曲げ伸ばしを行うだけでも効果があります。

  3. 弾性ストッキング・着圧ソックスの活用
    日中に足を適度に圧迫することで静脈の流れを促し、むくみの予防に有効です。朝起きてむくみが軽い時に履き始めると効果的です。ただし、着用が難しい場合や持病がある方は事前に医師に相談してください。

  4. マッサージ
    足先から膝方向に向けてやさしくマッサージするとリンパの流れが改善し、むくみの緩和が期待できます。入浴後など血行が良い時に行うと効果的です。ご高齢の方は肌も弱くなっていることが多いので、適度な力加減で行い、必要があればクリームやローションなどを使いましょう。

  5. 身体を冷やさない
    冷えは血行不良を招き、むくみを悪化させます。足元を冷やさないよう工夫し、入浴や足湯で体を温めて血流を促進しましょう。

  6. 減塩・バランスの良い食事
    塩分は1日6g未満を目標に薄味に慣れましょう。タンパク質(肉・魚・大豆製品等)をしっかり摂って低アルブミンを防ぐことも大切です。野菜や果物に含まれるカリウムは塩分の排出を助けます(腎臓病の方はカリウムの摂取を制限されている場合もありますので、主治医の指示に従ってください)。


当院で行っている検査・治療について

慢性的なむくみの原因を正確に見極めるために、当院では以下のような検査を行っております。

  • 血液検査(貧血の有無、腎機能・肝機能、炎症反応〈感染の有無〉などのチェック)

  • 尿検査(尿タンパクや尿潜血の有無など腎臓の状態チェック)

  • 心臓超音波検査(心エコー)・心電図(心臓のポンプ機能や弁膜症、不整脈の評価)

  • 血管エコー(深部静脈血栓症の有無を確認)

  • 胸部レントゲン検査(肺や心臓のうっ血、胸水の有無を確認)

これらの検査は予約なしで当日中に実施可能です。結果が判明し次第、原因に応じた治療を迅速に開始いたします。
例えば、心不全が見つかれば利尿薬など心臓を助けるお薬の処方、腎臓の問題には薬での治療以外にも食事指導や必要に応じ専門医への紹介、貧血には鉄剤の投与といった対応を行います。また、むくみが強く歩行困難な患者様には弾性ストッキングの使用指導や、一時的に利尿剤を使って症状緩和を図ります。
ご高齢で通院が難しい場合でも、当院では訪問診療にて診察や薬の処方を行うなど柔軟に対応しております。


まとめ〜慢性的なむくみと上手に付き合うために〜

在宅で療養されている高齢の方々にとって、足のむくみは日々の悩みの一つですが、決して「年のせい」と侮れません。
慢性的なむくみの陰に重篤な病気が潜んでいることもありますし、たとえ病気由来でなくとも放置すれば歩行能力の低下や感染症リスクなど生活の質を下げる要因となりえます。
「いつものむくみだから」と見過ごさず、少しでも異変を感じたら早めに医療機関に相談してください。日々の生活でできる工夫を続けつつ、適切な検査と治療によって原因を明らかにし対処することが解決につながります。
慢性的なむくみが気になる方は、些細なことでもお気軽に当院へご相談ください。専門医がしっかりとお話を伺い、皆様の健やかな生活を支えるお手伝いをいたします。


📞 電話:045-755-3039

📧 メール:mychondaiin@gmail.com

🏥 診療科:内科、循環器内科

🔷 総合内科専門医、循環器内科専門医

📍 Myクリニック本多内科医院(横浜市神奈川区反町4丁目27-1)

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監修: Myクリニック本多内科医院 院長 本多洋介

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