足のむくみが気になる方へ|考えられる原因と見逃せない病気とは?
「夕方になると足がパンパンになる」「靴下の跡がなかなか消えない」「なんとなく足が重だるい」——こうした“足のむくみ”の症状は、年齢を重ねた多くの方に見られるお悩みです。
一時的なものであればあまり心配はいりませんが、むくみが毎日のように続く、あるいは左右の足で差がある、痛みや動悸、息切れなど他の症状を伴う場合には、背後に病気が隠れている可能性があります。
今回は、循環器内科専門医の視点から、足のむくみに関する基礎知識から重大な疾患まで、僕の経験した実際のケースの話を交えながら丁寧に解説いたします。
足のむくみとは何か?〜まずは基礎知識を〜
むくみ(医学的には「浮腫」といいます)は、体の中に余分な水分がたまり、皮膚の下にしみ出してくる状態を指します。そのため、むくんでいる所を指で押すと、凹んで、しばらくすると元に戻ってきます。
特に重力の影響を受けやすい足元に現れることが多く、立ち仕事をしている方や、長時間座りっぱなしの方では夕方にむくみやすくなります。
一過性のむくみであれば、足を上げて休む、塩分を控えるといった工夫で改善しますが、なかなか治らない慢性的なむくみには注意が必要です。
むくみを引き起こす身近な原因(病的な意義が少ないもの)
以下のような原因で、誰にでもむくみは起こり得ます。
- 加齢や筋力の低下
筋肉は血液を心臓に押し戻すポンプの役割を果たしています。特にふくらはぎは第二の心臓ともいわれており、ふくらはぎの筋力が低下すると、血液やリンパ液がうまく循環せず、足にたまってむくみやすくなります。
- 長時間の同一姿勢
飛行機での移動やデスクワーク、テレビを長時間観るといった同じ姿勢でいる時間が長く続くと、血流が悪くなりむくみを引き起こしやすくなります。
- 塩分の多い食事
塩分を摂りすぎると体が水分を溜める方向に働くため、むくみやすくなります。特に塩分が多く含まれているインスタント食品や外食を摂ることが多い方は注意が必要です。
実際の症例:
70代の女性で、足の骨折での入院中から両足のむくみが出現し、退院後も改善しないということで受診されました。採血や心臓超音波検査などでは問題なかったため、病的な原因ではないだろうと考えました。下肢の筋力が以前より落ちていることが原因と考えられたため、歩く量を増やして頂くことと、自宅でできる下肢の筋力トレーニングの方法をお伝えしたところ、1か月程度でむくみは改善しました。今も運動の量は減らさず、元気に外来通院して頂いています。
病気が原因のむくみ|見逃してはいけない疾患たち
なかなか良くならないむくみの背景に重大な疾患が隠れていることがあります。以下に代表的な病気と特徴を紹介します。
1. 心臓病(虚血性心疾患、心不全、不整脈、弁膜症)
心臓のポンプ機能が低下することで、血液がうまく送り出せず、体に血液がうっ滞して足がむくみます。最初は足がむくみやすく、病状が進行してくると、胸に水がたまり、息切れや動悸などの症状が現われきます。
特徴的な症状:
・両足のむくみ
・体重が急に増えてなかなか元に戻らない
・横になると息苦しい、ヒューヒュー音がする(夜間の呼吸困難)
・動いたときや歩いた時の息切れ
実際の症例:
80代の女性で、3週間前から両足のむくみが出現し、最近になって息切れも強くなってきたということで受診されました。
聴診上、心音に収縮期雑音があり、心臓超音波検査で重度の大動脈弁狭窄症と診断されました。大動脈弁狭窄症を原因とした心不全の増悪と判断し、利尿剤と心不全治療薬の導入により、1週間で体重が2kg減少し、症状は大きく改善しました。
大動脈弁狭窄症に関しては経カテーテル的大動脈弁植え込み術(TAVI)目的に総合病院に紹介し、無事に治療も終えられて、現在はお元気で外来に通院して頂いております。
2. 腎臓病(ネフローゼ症候群・慢性腎不全・糖尿病性腎症・急性腎障害)
腎臓は血液をろ過して、体の余分な水分を尿として排出する臓器です。腎機能が低下すると水分が体内にたまり、特に顔やまぶた、足にむくみが出ます。糖尿病性腎症は急激に悪化することもあるので、糖尿病がある方は特に注意が必要です。
特徴的な症状:
・朝にまぶたが腫れる
・尿の泡立ち
・尿量が少ない
・体重が増えている
3. 肝硬変や低栄養
肝臓で作られるたんぱく質である「アルブミン」が不足すると、血管から水分が漏れ出しやすくなり、むくみや腹水が出やすくなります。大量の飲酒をする人や食事が偏っている人は注意が必要です。
特徴的な症状:
・腹部の膨らみ(腹水)
・足首やすねのむくみ
・体重減少、食欲不振
4. 下肢静脈瘤・深部静脈血栓症
足の血管(静脈)がこぶのように膨らんだり、血栓で血管が詰まると、足の静脈から心臓に血が戻りにくくなり、むくみを引き起こします。
特徴的な症状:
・片足だけのむくみ
・足のだるさ・痛み
・足の血管が浮き出る
深部静脈血栓症は放置すると肺塞栓症という命に関わる病態に進展する恐れがあるため、片足だけが急にむくんだ場合は早めの受診が必要です。
5. 貧血(鉄欠乏性貧血など)
貧血は体内の酸素運搬能力が低下する状態ですが、貧血により酸素が足りないと感知すると、血管を拡張させて心拍数を上げ、循環血漿量を増やす代償機構が働きます。
その結果、静脈圧が上昇して、末梢毛細血管内の水分を組織へ押し出す力が強まり、皮下に水が溜まりやすくなり、浮腫につながります。
特徴的な症状:
・両足のむくみ(特にすねや足首)
・顔色が悪い、まぶたの裏が白い
・倦怠感、動悸、めまい
・爪の変形(スプーン状爪)や口角炎など鉄欠乏の徴候
どのような時に受診すべきか?
以下のようなケースでは、病院での検査が必要です。
- むくみが1週間以上続いている
- 痛みがある、熱感がある、左右差がある
- 息切れ、動悸や倦怠感など足以外の症状を伴っている
- 足だけでなく顔や手にもむくみが出ている
- 朝起きたときにまぶたが腫れている
特に高齢の方や基礎疾患(高血圧、糖尿病、心臓病、腎臓病)をお持ちの方は、むくみを「年齢のせいだから仕方ない」と決めつけず、一度医師の診察を受けることをお勧めします。

自宅でできるむくみ対策
- 足を高くして休む
寝るときに足元にクッションを入れるなどして、心臓より高くするとむくみが軽減します。
- 適度な運動
ふくらはぎをよく動かしてあげることは、むくみ対策に非常に効果的です。
- 弾性ストッキングの使用
医療用ストッキングは、静脈うっ滞によるむくみに有効です。左右差がある場合は医師に相談しましょう。
- 塩分を控える食生活
1日6g未満の減塩を目標に、味噌汁や漬物、加工食品の量を見直してみましょう。
当院でできる検査・治療について
当院では、むくみの原因を正確に診断するために、以下の検査を実施しております。
- 血液検査(貧血の有無、腎機能・肝機能のチェック)
- 尿検査(尿タンパクの有無のチェック)
- 心臓超音波検査、心電図による心臓病のチェック
- 血管エコー(下肢静脈血栓症の確認)
- 胸部レントゲンによる胸水のチェック
当院では予約なしで上記の検査が可能です。また、ご来院が難しい高齢の患者様には、訪問診療による診察や利尿薬の処方なども対応しております。
まとめ
足のむくみは、加齢や生活習慣の影響で誰にでも起こりうるものですが、その背景に心臓病や腎臓病といった重大な病気が潜んでいることもあります。
「ただのむくみ」と軽く見ず、変化を感じたら早めに医療機関にご相談ください。
適切な検査と治療により、早期に原因を突き止めることが、解決に繋がります。
むくみが気になる方は、どうぞお気軽にへご相談ください。
🏥 診療科:内科、循環器内科
🔷 総合内科専門医、循環器内科専門医
📍 Myクリニック本多内科医院(横浜市神奈川区反町4丁目27-1)
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ワクチンの予約に使用できる他、今後多方面での展開を考えております。
監修: Myクリニック本多内科医院 院長 本多洋介