糖尿病とは
通常、血糖値はすい臓から分泌されるインスリンというホルモンの作用で一定に保たれています。 糖尿病は、インスリンの分泌不足や働きの低下(抵抗性)により血糖値が高くなっている状態のことです。血糖値が高い状態を放置していると、血管の壁にストレスがかかり、血管が傷ついたり、詰まったりして、動脈硬化を進展させていきます。このように、高血糖が原因で血管とそれにつながる臓器が障害されると、糖尿病に関連するさまざまな合併症が生じます。「糖尿病が強く疑われる者」と「糖尿病の可能性を否定できない者」を合わせると、日本人の約4人に1人が糖尿病またはその予備群にあたると推計されています。
糖尿病が疑われる症状とは?初期サインの目安

これらの症状は糖尿病の初期症状や糖尿病の合併症によるものである可能性があります
糖尿病の分類と診断

糖尿病は大きく分けて
・1型糖尿病→自己免疫によるβ細胞破壊(自己免疫性)または原因不明(特発性)のもの。
・2型糖尿病→遺伝的な素因と肥満、加齢、運動不足などの環境要因によって発症するもの。
・その他の糖尿病→妊娠糖尿病、薬剤性、その他の内分泌疾患など。
などがありますが、日本人は2型糖尿病が多く、遺伝的な要素と生活習慣が複合的に関わって発症し、欧米人と比べて肥満度が低くても糖尿病になりやすい傾向があると言われています。

糖尿病の診断は採血で行います。血糖には、食事前に測る「空腹時血糖」、食後に上がる「食後血糖」があり、過去1~2か月の平均的な血糖状態を示す指標が「HbA1c(ヘモグロビンA1c)」です。
診断は医療機関での採血に基づき、
①空腹時血糖126mg/dL以上
②75g経口ブドウ糖負荷試験2時間値200mg/dL以上
③随時血糖200mg/dL以上
④HbA1c 6.5%以上
のいずれかを2回以上満たすと「糖尿病」の診断となります。血糖値は日々変動するため、1回高かっただけでは糖尿病と断定できず、複数のタイミングでの検査が必要になります。糖尿病の治療では合併症予防を目的とした場合、HbA1c 7.0%未満を目指して治療を行います。血糖値の正常化を目指している場合はHbA1c 6.0%未満、治療強化が困難な場合はHbA1c 8.0%未満が目標になります。
当院では院内で血糖とHbA1cの迅速検査が可能であり、数分で結果が出ます。指先から数滴の血液を採るだけで検査が可能で、その場で結果が分かるため、別の日に血糖の結果を聞きに来る必要が無く、細やかな薬の調整やモチベーションの維持に役立っています。
糖尿病から起こる合併症とそのリスク
糖尿病は高血糖が続くことで血管が傷み、合併症のリスクが高まります。血管の合併症としては大きく分けて、微小血管障害と大血管障害(大血管症)があります。
代表的な微小血管障害としては網膜症・腎症・神経障害があり、視力低下や目のかすみ、腎機能障害(悪化すると透析が必要に)、足のしびれや感覚障害が症状として挙げられます。大血管障害としては心臓、脳、足の血管が影響を受けやすく、心筋梗塞や脳卒中、下肢動脈疾患などの重篤な病気を引き起こす可能性があります。これらの病気は前触れなく発症するものもあり、発症するだけで命に危険が及ぶ、あるいは重篤な後遺症を残すものも少なくありません。
日本人を対象に実施されている大規模な調査である「JPHC研究」で、糖尿病の人は脳卒中と脳梗塞の発症リスクが高く、全脳卒中の発症リスクは、男性で1.64倍、女性で2.19倍に上昇することが示されており、脳梗塞の発症リスクも、男性で2.22倍、女性で3.63倍に上昇したと報告されています。また、糖尿病の人は血糖値が正常な人より心筋梗塞や狭心症などの”虚血性心疾患”を発症する危険性が約3倍も高いと言われ、糖尿病患者の約9人に1人が心血管疾患で亡くなっていると報告されています。
当院では循環器内科専門医として糖尿病の合併症予防を始めとして、動脈硬化性疾患の検査やフォローアップも行っています。血管年齢を測るABI(足関節上腕血圧比)検査や、首の血管の動脈硬化を見る頸動脈エコー検査、心臓の機能をチェックする心臓超音波検査も行っていますので、動脈硬化が心配な方、現状の動脈硬化の程度を把握したい方は一度ご相談ください。

糖尿病の治療と予防

糖尿病の治療は、食事療法・運動療法・薬物療法の3つの柱で行われ、食事療法と運動療法が基本となり、生活習慣の改善により血糖が下がらない場合、早急に血糖値を下げる必要がある場合には薬物療法を行います。薬物療法としては内服薬(DPP-4阻害薬、SGLT2阻害薬、ビグアナイド、スルホニル尿素薬、GLP-1受容体作動薬など)や注射薬( GLP-1受容体作動薬、GIP/GLP-1受容体作動薬、インスリンなど)を使用します。
当院ではインスリンの導入や管理を始めとして、糖尿病治療の新しい選択肢として注目されている注射薬のチルゼパチド(マンジャロ)やセマグルチド(オゼンピック)の導入や管理も行っています。マンジャロやオゼンピックは血糖低下作用と共に体重減少効果も報告されており、肥満傾向のある2型糖尿病患者に適していると言われています。
マンジャロやオゼンピックは注射剤ですが、インスリンとは違い、ご自宅にて週に1回自己注射という形で投与する薬剤になります。マンジャロは薬と針がすでにセットされた専用のペンになっており、患者さんはキャップを外してペンを皮膚にあてボタンを押すだけで簡単に注射ができます。オゼンピックには針がついておらず、インスリンのように打つ毎にご自身で針を付け替えて頂く必要がありますが、付ける針は非常に細い針になっています。そのため、マンジャロは1本使い切りのタイプとなっており、オゼンピックは1本で数回分の注射ができます(0.25mg/週で注射→1本で8週間分、0.5mg/週で注射→1本で4週間分)。これらの注射薬にも副作用のリスク(吐き気、下痢、腹痛、膵炎など)もあるため、血糖値や内服薬の状況により注射薬の必要性を判断していきます。
一方、薬をなるべく使いたくないと思われる方もいらっしゃいますし、それも当然のお気持ちだと思います。しかし、治療を先延ばしにすると血管の合併症で日常生活に支障が出ることがあります。当院は生活習慣の改善を土台にして、必要最小限の薬剤を選び、将来的な減量・中止も視野に入れて一緒に治療を進めていきます。
糖尿病診療は患者さん一人ひとりの年齢や病状・ライフスタイルによって適切な治療や目標が変わってきます。当院では、日本糖尿病学会の診療ガイドラインに準拠し、患者さんそれぞれに合ったテーラーメイドな診療を行っています。
糖尿病に関するよくある質問Q&A
Q.どんな症状が出たら糖尿病を疑いますか?
A.のどの渇き・多飲多尿・体重減少・疲れやすい・目のかすみ・尿が泡立つなどが初期サインとして挙げられます。しかし、初期は無症状であることも多いので、健診の血糖値やHbA1cが高めなら早めに受診しましょう。
Q.診断はどの検査で決まりますか?
A.採血検査を行い、空腹時血糖126mg/dL以上、75gOGTT2時間値200mg/dL以上、随時血糖200mg/dL以上、HbA1c6.5%以上のいずれかを満たすことで行われます。これらのいずれかの値が1回でも確認されれば「糖尿病型」と判定され、2回以上確認されれば「糖尿病」と診断されます。
Q.目標値はどれくらい?下げ過ぎは大丈夫?
A.一般的な目標は糖尿病による合併症を防ぐことが目的であるため、HbA1c 7.0%未満を目指します(可能なら6.5%未満)。糖尿病の管理が非常に難しい場合や低血糖のリスクが高い場合、高齢者の場合には目標値は変わってくることがありますので、主治医の先生と相談しましょう。
Q.食事・運動で気をつけることは?
A.1日3食規則正しく、主食(炭水化物)を適量にし、野菜・魚・大豆を増やしましょう。甘い飲み物やアルコールは控えましょう。間食は血糖値が高い時間を長くしてしまうため、避けましょう。運動はウォーキング、ジョギングなどの長時間継続して行える有酸素運動を行いましょう。頻度としては週に3~5日、1回あたり20分~30分以上が目安とされています。運動を始めたばかりの人や慣れていない人は、無理をしないように週に2~3回から始めて、徐々に頻度を増やしていきましょう。
Q.薬は一生必要?インスリンはいつから?
A.生活習慣の改善により血糖が下がらない場合、早急に血糖値を下げる必要がある場合には内服薬や注射薬による薬物療法を行います。薬物療法を開始した後も、生活習慣の改善により薬を離脱した方も多くいらっしゃいます(その場合にも血糖の定期的なチェックや通院は必要になります)。インスリンが必要になる状況はいくつかありますが、インスリン以外の薬で糖尿病の管理が難しい場合、血糖が高い状態を長く放置していて糖毒性を解除しなければならない場合などが挙げられます。
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