心房細動とは——“脈がバラバラに感じる”不整脈の代表格です
心臓の上の部屋である心房が細かく震えることで、心臓全体のリズムが不規則になり、脈が飛んだり速くなったりする状態を心房細動といいます(図1)。 症状が出たり消えたりする「発作性」のタイプから、途切れずに続いてしまう「持続性・慢性」まで幅があり、まったく症状がなく健診や家庭血圧計の「不整脈」表示やマークで偶然見つかることもあります。症状の強さと病気の重さが必ずしも一致しないため、気になるサインがあるときは、心房細動の有無を調べておくことが、結果的に安心への近道になります。「【医師が解説】心房細動について その1 症状と早期発見について」はこちらもご覧ください。
症状チェック——こんなサインが続くときはご相談ください
• 動悸・脈の乱れ:脈がドキドキ速くなる、あるいは一定でない感覚が数分から十数分続いたり、短時間でも繰り返したりする場合には、心房細動をはじめとする不整脈を疑います。
• 息切れ・だるさ:階段や坂道で息が上がりやすく、以前より疲れやすさが気になるようになったときは、心拍の異常や心機能の変化が隠れていないか確認します。
• 胸の圧迫感や違和感:強い痛みでなくても、重苦しさや締め付けられる感じが断続的に続くときは、心房細動だけでなく狭心症など他の心疾患を除外する必要があります。
• めまい・ふらつき:立ちくらみのような症状が以前より増えたり、一瞬意識が遠のくような感覚が出てきたときは、徐脈性の心房細動が原因となっていることがあります。その他の原因としては洞不全症候群なども原因として考えられるため、24時間心電図などで評価を行います。
• 家庭血圧計やスマートウォッチのアラート:不規則脈の表示や不整脈通知が増えてきた場合は、デバイスに記録して頂ければ診療の参考になります。保存機能やスクリーンショットをご用意ください。
受診の判断基準(目安)——迷ったら“早めの受診”が安心につながります
次のいずれかに当てはまるときは、症状が落ち着いているときでも一度ご相談ください。 1. 動悸が5〜10分以上続く、あるいは短時間でも頻回に繰り返すとき。 2. 家庭血圧計やウェアラブル機器で不規則脈の警告が出るとき。 3. 高血圧・睡眠時無呼吸症候群・糖尿病・肥満・喫煙・飲酒など、心房細動のリスクとなる要素を多くお持ちの方。 4. 片側の手足の脱力・しびれ、ことばが出にくい、視野の欠けなど、いわゆる脳梗塞を疑う症状が一時的でもみられたとき(この場合は緊急での治療が必要な可能性もあるため、救急車を呼ぶこともご検討ください)。放置した場合のリスク——“心原性脳塞栓症という大きなリスク”
心房細動を繰り返すと心房の中の左心耳という部分に血栓ができやすくなり、それが脳の血管へ流れて詰まることで心原性脳塞栓症を起こす危険が高まります。心臓の中に出来る血栓は脳の血管と比べると巨大であるため、心原性脳塞栓症は大きな脳梗塞となり、大きな後遺症を残すことが多いです。「【医師が解説】心房細動について その2 なぜ脳梗塞は起きるのか?~原因・予防・治療法まで解説~」はこちらもご覧ください。
また、不規則な速い脈が続くと心不全の引き金となり、息切れやむくみの原因となることがあります。脈が速いことが続くと心臓が疲れてしまうようなイメージです。その場合には脈をゆっくりにすること、心房細動を止めて通常の脈に戻すことなどが必要となってきます
受診前の準備(セルフチェック)——“血圧×脈”の記録が診療の補助になります
受診の数日前からで構いませんので、朝晩の血圧と脈拍を記録してみてください。家庭血圧計に「不規則脈」や「不整脈」マークや表示が出たときは、その時の脈拍数を記録して頂くと、診療の助けになる場合があります。普段の脈拍が60-80回/分くらいの方が、脈拍数が120回/分くらい+血圧計の「不整脈マーク」は心房細動を強く疑う所見です。 スマートウォッチで「心房細動」の指摘があった場合は時刻と心拍数、可能であれば心電図の記録も見せていただけると診断に早く近づく場合が多いです。診断の流れ(当日検査も可能です)——“その日の不安をその日のうちに軽くする”ために
初診では、まず丁寧な問診と診察で症状の出方や持続時間、普段の内服薬などを確認し、12誘導心電図で現在の脈の状態を評価します。 症状が断続的な場合には、日常生活の中で脈を追えるホルター心電図などを使用し、見逃されやすい発作性の心房細動を丁寧に拾い上げます。 さらに、心エコー検査で心臓弁膜症の有無や心機能を確認し、血液検査で甲状腺機能や電解質、腎機能などをチェックします。当日結果説明が可能なものは画像などをお見せしながら説明させて頂きます。心房細動が強く疑われる場合には抗血栓療法を開始したり、不整脈に対する薬を処方し、薬の効果があるかどうかで診断をしていく場合もあります(診断的治療といいます)。治療の選択肢——その人に対する“心房細動に対する治療”
心拍数を整える「レートコントロール」
心房細動そのものを止めることが難しい場合でも、心拍数を適切に抑えることで症状を和らげることが可能になります。β遮断薬やカルシウム拮抗薬などを用いて、脈の速さをコントロールします。頻脈性心房細動の場合や、労作時に頻脈による動悸症状がある場合の選択肢になります。徐脈性心房細動と呼ばれる脈がゆっくりであるタイプの心房細動の場合には逆効果になる場合もあるので、注意が必要です。不整脈を抑える「リズムコントロール」
こちらは心房細動を停止させ、正常なリズム(洞調律)を保つことを目的とした治療です。 抗不整脈薬(例:シベンゾリン、アミオダロンなど)が使用されます。 薬の選択は年齢、腎機能、心機能やその他の合併症の有無により異なります。また、薬によって心房細動が停止しない場合には、電気的除細動といって鎮静薬で眠った状態で電気ショックを当てることもあります。脳梗塞を防ぐ「抗凝固療法」
心房細動の患者さんでは、抗凝固薬による脳梗塞の予防が非常に重要です。 以下のような方は特に注意が必要です: ① 75歳以上の方 ② 高血圧・糖尿病・心不全などの持病がある方 ③ 過去に脳梗塞を起こした方 抗凝固薬には、ワーファリンや最近主流となっているDOAC(直接作用型経口抗凝固薬)などがあります。 自己判断で中止せず、定期的な医師の診察を受けましょう。 心房細動の抗凝固療法に関してはこちらもご覧ください: 「心房細動について その2 なぜ脳梗塞は起きるのか?~原因・予防・治療法まで解説~」根本治療を目指す:カテーテルアブレーション
カテーテルアブレーションとは?
心房細動を引き起こす異常な電気信号の発生源を、カテーテルで焼灼して取り除く治療法です。 局所麻酔下で行われ、入院期間は通常数日程度。体への負担が比較的少ないため、近年では心房細動の根治療法として広く行われています。


