心不全と聞くと、「心臓の動きが悪くなる怖い病気」という印象を持つ方が多いかもしれません。実際、心不全では心臓の働きが落ちることで、息切れや足のむくみなどが現れ、放っておくと少しずつ悪化することがあります。
一方で、心不全は「心臓の収縮力が弱い場合」だけに起こるわけではありません。入院中や外来で「心臓の動きは悪くないけれど、心不全です」と説明され、戸惑う方もいらっしゃいます。
この記事では、心不全を左室駆出率(EF)で分類するHFrEF・HFmrEF・HFpEFの違いに焦点を当てます。心不全そのものの全体像は、必要に応じて心不全の案内もあわせてご覧ください。
心不全とはどんな状態でしょうか
心不全は、心臓に何らかの異常が起き、全身に必要な血液を十分に送り出せなくなったり、血液をうまく受け取れなくなったりすることで、息切れ、むくみ、だるさなどが出てくる状態です。
原因には、心筋梗塞、高血圧、弁膜症、不整脈、心筋症などがあります。糖尿病、脂質異常症、慢性腎臓病、睡眠時無呼吸症候群も心不全の発症や悪化に関わります。
心不全の典型的な症状には、息切れ・息苦しい、足のむくみ、短期間の体重増加、横になると苦しい、夜間の咳などがあります。症状が続く場合は「年齢のせい」と決めつけず、心臓の状態を確認しておくことが大切です。
心不全は「左室駆出率(EF)」で3つのタイプに分けられます
心不全のタイプを考えるうえで重要になるのが、左室駆出率(EF)です。EFとは、左心室にたまった血液のうち、1回の拍動でどれくらいの割合を送り出せているかを示す指標です。
EFは主に心臓超音波検査(心エコー)で評価します。心エコーではEFだけでなく、心臓の壁の厚さ、広がりやすさ、弁膜症の有無、心房の大きさなども確認できます。
- HFrEF(ヘフレフ):EFが40%未満に低下した心不全
- HFmrEF(ヘフエムレフ):EFが40〜49%程度の中間的な心不全
- HFpEF(ヘフペフ):EFが50%以上保たれている心不全
この分類は、治療方針を考えるうえで大切です。ただし、EFだけで心不全のすべてが分かるわけではありません。症状、身体所見、血液検査、心電図検査、レントゲン検査などを組み合わせて総合的に判断します。

HFrEF:収縮機能が低下した心不全
HFrEFは、心臓が血液を送り出す力そのものが低下しているタイプです。心筋梗塞で心筋が傷んだ後、長年の高血圧で心臓に負担がかかった後、心筋症などを背景に起こることがあります。
HFrEFでは、息切れ、だるさ、足のむくみ、体重増加などが目立ちやすくなります。心臓の収縮力が落ちているため、全身に十分な血液を送れず、肺や足に水分がたまりやすくなるためです。
治療では、ARNI、ACE阻害薬・ARB、β遮断薬、MRA、SGLT2阻害薬などを、血圧、脈拍、腎機能、カリウム値などを見ながら組み合わせます。これらの薬は、心臓への負担を減らし、悪化や再入院を防ぐために重要です。薬の詳しい説明に寄りすぎると別テーマになるため、この記事では「HFrEFでは薬物療法の組み合わせが特に大切」と押さえてください。

HFmrEF:収縮機能が中間の心不全
HFmrEFは、EFが40〜49%程度の中間的なタイプです。HFrEFとHFpEFの間に位置し、病態は人によって異なります。
かつてEFが低かった方が治療によって改善してこの範囲に入ることもあれば、EFが保たれていた方が徐々に低下してこの範囲に入ることもあります。冠動脈疾患、高血圧、糖尿病などが背景にある場合も少なくありません。
HFmrEFでは、HFrEFに近い考え方で薬物療法を検討することがあります。大切なのは、「中間だから軽い」と決めつけず、症状、EFの推移、心エコー所見、採血結果を見ながら、悪化を防ぐ治療を続けることです。

HFpEF:EFが保たれていても起こる心不全
HFpEFは、EFが50%以上に保たれているにもかかわらず、心不全症状が出るタイプです。「心臓の動きは悪くないのに、なぜ心不全なのですか」と感じやすいのは、このHFpEFです。
HFpEFでは、心臓の収縮力が保たれていても、心臓が硬くなって十分に広がれないことがあります。血液を受け取る力が低下すると、肺や全身にうっ血が起こり、息切れやむくみにつながります。
背景には、高血圧、加齢、肥満、糖尿病、慢性腎臓病、睡眠時無呼吸症候群、心房細動などが関わることがあります。特に高齢の方や女性ではHFpEFが多く、収縮力だけを見て安心しすぎないことが大切です。
HFpEFの治療では、うっ血が強い場合の利尿薬、血圧管理、体重管理、塩分制限、併存疾患の管理が重要です。近年はSGLT2阻害薬など、HFpEFにも有用性が示される薬が増えてきています。治療薬の選択は、血圧、腎機能、糖尿病の有無、むくみの程度などを踏まえて個別に考えます。


慢性心不全の治療薬は、左室駆出率や合併症を踏まえて検討します
タイプにかかわらず、早めに相談したい症状
HFrEF、HFmrEF、HFpEFのどのタイプでも、次のような症状がある場合は早めの受診をおすすめします。
- 階段や坂道で以前より息切れしやすい
- 夕方になると足がむくむ
- 数日で体重が急に増えた
- 横になると息苦しく、枕を高くしたくなる
- 動悸や脈の乱れを感じる
- 健診で心電図異常や心拡大を指摘された
動悸や脈の乱れがある場合は、動悸・脈が飛ぶ、健診での心電図異常・不整脈も関連します。症状が出たり消えたりする場合は、ホルター心電図検査が役立つことがあります。
タイプを見分けるために行う主な検査
心不全のタイプを判断するには、心エコーだけでなく複数の検査を組み合わせます。
- 心エコー:EF、心臓の壁の厚さ、弁膜症、拡張能、心房の大きさを評価します。
- 血液検査:BNP/NT-proBNP、腎機能、電解質、血糖、脂質などを確認します。
- 心電図検査:不整脈、心房細動、過去の心筋梗塞、高血圧による心臓への負担を調べます。
- レントゲン検査:心拡大、肺うっ血、胸水、肺の病気の有無を確認します。
- 尿検査:糖尿病や慢性腎臓病がある方では、腎臓への影響をみるうえで参考になります。
生活習慣病や動脈硬化の評価として、必要に応じて頸動脈超音波検査(頚動脈エコー)、ABI検査を行うこともあります。いびき、無呼吸、日中の眠気がある方では、睡眠時無呼吸症候群の簡易検査も検討します。
本多内科医院でお手伝いできること
まとめ:EFのタイプを知ることは、治療方針を考える出発点です
- 心不全は、EFによってHFrEF、HFmrEF、HFpEFの3つに分類されます。
- HFrEFは収縮力が低下したタイプで、薬物療法の組み合わせが特に重要です。
- HFmrEFは中間的なタイプで、EFの変化や症状を見ながら治療方針を考えます。
- HFpEFはEFが保たれていても起こる心不全で、高血圧、心房細動、腎臓病、睡眠時無呼吸症候群などの管理が大切です。
- 息切れ、むくみ、体重増加、動悸が続く場合は、早めに心臓の状態を確認しましょう。
「心機能は正常と言われたのに苦しい」「心不全のタイプがよく分からない」と感じた方は、検査結果だけで悩まず、症状とあわせてご相談ください。
よくある質問
HFpEFとは何ですか?
HFpEF(ヘフペフ)は、左室駆出率(EF)が50%以上に保たれているにもかかわらず心不全症状が出るタイプです。心臓の収縮力は保たれていても、心臓が硬くなって十分に広がれないために、肺や全身にうっ血が起こり、息切れやむくみにつながります。高血圧・加齢・肥満・糖尿病・慢性腎臓病・睡眠時無呼吸症候群・心房細動などが背景に関わり、特に高齢の方や女性に多くみられます。
HFrEFとHFpEFの違いは何ですか?
HFrEF(ヘフレフ)はEFが40%未満に低下し、心臓が血液を送り出す力そのものが低下したタイプです。一方HFpEF(ヘフペフ)はEFが50%以上に保たれていても、心臓が硬く広がりにくいために心不全症状が出るタイプです。治療面では、HFrEFはARNI・β遮断薬・MRA・SGLT2阻害薬などの薬物療法の組み合わせが特に重要で、HFpEFは血圧管理・体重管理・塩分制限・併存疾患の管理が中心になります。
心不全のタイプはどの検査で分かりますか?
主に心臓超音波検査(心エコー)で左室駆出率(EF)を測定して分類します。あわせてBNP/NT-proBNPなどの血液検査、心電図検査、レントゲン検査を組み合わせ、症状や身体所見も踏まえて総合的に判断します。本多内科医院では、これらの検査を院内で行い、当日にEFと併存疾患まで評価できる体制を整えています。
心不全の診断・管理は、循環器内科専門医のいる当院で
心不全はHFrEF・HFmrEF・HFpEFのタイプによって治療方針が異なり、 EFや併存疾患を踏まえた評価が欠かせません。本多内科医院(反町駅徒歩4分・東神奈川駅徒歩12分)では、 循環器内科専門医が心エコー・BNP(血液検査)・心電図でタイプを見極め、 薬物療法から高血圧・糖尿病などの生活習慣病まで一体で管理します。
- 予約なしで相談できます。息切れ・むくみ・体重増加が気になる段階でご相談ください
- 心エコー・BNP・心電図を院内で実施。EFと併存疾患まで当日評価できます
- HFpEFを含むタイプ別の管理。収縮力が保たれた心不全も専門医が継続して診ます
本多内科医院(内科・循環器内科)/院長 本多洋介(総合内科専門医・循環器内科専門医)
📍 横浜市神奈川区反町4丁目27-1 | 東急東横線「反町駅」徒歩4分・JR「東神奈川駅」徒歩12分

