「階段で息が上がるようになった」「歩く速度が落ちた」「夜、息苦しくて目が覚める」。
こういった息切れは、年齢のせい、運動不足のせいと思われがちですが、心不全、狭心症、弁膜症、不整脈など、心臓の病気が背景に隠れていることがあります。
「見逃してはいけない息切れがある」ことを、まず知っておいてください。
この記事では、循環器内科・総合内科の立場から、心臓が関係する息切れで注意したい症状、受診のタイミング、内科で行う検査についてお伝えします。心不全・狭心症・弁膜症の詳しい診断や治療は、本文中の疾患リンク先で詳しく扱っています。
まず気をつけたい息切れのサイン
次のうち1つでも当てはまる場合は、心臓の病気が関係している可能性があります。早めに医療機関へ相談してください。
- 以前は平気だった階段・坂道・早歩きで息切れが増えた
- 横になると苦しく、体を起こすと楽になる
- 夜中に息苦しさや咳で目が覚める
- 足がむくんできた、急に体重が増えた、尿の回数や量が減った
- 胸の圧迫感や痛み、冷や汗、吐き気、めまい、失神がある
- 動悸や脈の乱れを伴う
「この程度で受診していいのか」と迷う気持ちはよく分かります。ただ、心臓の病気は急に悪化することがあります。いつもと違う息切れに気づいた時点で、早めに相談することが大切です。
心臓が原因の息切れか、それ以外か
症状だけで断定はできませんが、出方やタイミングにはいくつかの特徴があります。
心臓が原因の場合は、動いたときに悪化しやすく、むくみ、体重増加、夜間の息苦しさを伴うことが多くなります。心臓は運動時に負担がかかる臓器であり、心不全になると体に水分がたまりやすくなるためです。横になると苦しく、座ると楽になるという訴えも、心不全でみられることがあります。
肺が原因の場合は、咳や痰、ゼーゼーという喘鳴が目立ち、風邪のあとや季節の変わり目をきっかけに症状が強まることがあります。代表的な疾患にはCOPD、気管支喘息・咳喘息があります。貧血の場合は、息切れに動悸・だるさ・立ちくらみが重なり、顔色が悪いと周囲に言われることもあります。
実際には、心臓・肺・貧血が重なっていることもあります。自己判断だけで様子を見るのではなく、問診、診察、心電図検査、レントゲン検査、血液検査などを組み合わせて判断します。
ケース1)
70代男性。動いたときの息切れが強くなってきたということで受診されました。1日40本のタバコを吸っていたヘビースモーカーの方です。レントゲンを撮ると、肺気腫を疑う所見と胸水貯留を認めました。心電図や心臓超音波検査を行うと、心臓の動きは正常な方の3分の1程度まで低下していました。
精密検査の結果、狭心症による心機能低下を来たしており、虚血性心筋症による心不全と肺気腫を合併している状態でした。心不全に対する治療で胸水は改善したものの、肺の病気による息切れが残り、心不全治療と並行して吸入薬による治療も行っています。
このように、心臓と肺の病気が同時に関係していることもあります。
心臓の息切れの背景にある病気
心不全:じわじわ増える息切れとむくみ
心不全は、心臓の働きが低下し、全身に血液をうまく送れなくなったり、体に水分がたまりやすくなったりする状態です。肺にも負担がかかるため、息切れ、夜間の咳、横になると苦しい、足のむくみ、体重増加などが出ることがあります。
「最近、少し歩くだけでしんどい」「前より歩くのがゆっくりになった」「階段を上るのがきつくなった」という変化から気づき、受診される方が多いです。 高血圧、糖尿病、慢性腎臓病、心房細動がある方は、心不全のリスクが高くなります。
狭心症:胸痛がなくても息切れだけで出ることがあります
狭心症は、心臓に栄養を送る冠動脈が狭くなり、心臓の筋肉が一時的に酸素不足になる病気です。典型的には胸痛や胸の圧迫感ですが、実際には「胸が重い感じ」や息切れだけで現れることもあります。
動いたときに症状が出て、休むと治まる。左肩やあごに違和感がある。冷や汗を伴う。これらは狭心症を疑う症状の一つです。安静時にも症状が出る、短期間で強くなる、頻度が増えている場合は、心筋梗塞に近い状態のこともあり、早めの対応が必要です。
弁膜症:健診での心雑音がきっかけになることもあります
弁膜症は、心臓の弁に異常が起こり、血液の流れが悪くなる病気です。ゆっくり進行することがあり、本人は「年のせいかな」と思いながら過ごしていることも少なくありません。
労作時の息切れ、疲れやすさ、動悸、めまい、失神などが出ることがあります。健診や診察で心雑音を指摘され、心臓超音波検査(心エコー)で弁の状態を調べることで見つかることもあります。
受診したら何を調べるか
心臓を調べるとなると、検査が多いのではと不安に思う方もいますが、まずは負担の少ない検査から行います。心臓の病気が強く疑われる場合には、診断や治療開始が遅くならないように進めます。
診察では、聴診、血圧、酸素飽和度を見ます。心電図検査では不整脈や心筋虚血のサイン、レントゲン検査では心拡大や肺のうっ血、胸水、肺の病気の手がかりを見ます。血液検査では貧血、腎機能、甲状腺、心不全を示す数値などを調べます。
心臓超音波検査(心エコー)は、心臓の動き、弁膜症、心不全の原因を調べるのに有用です。当院では必要と判断した場合、なるべく当日に心エコーを行い、その日のうちにある程度の方向性が見えるように診療しています。
動悸や脈の乱れがある場合は、ホルター心電図検査を行うことがあります。生活習慣病や喫煙歴があり、動脈硬化が気になる場合には、ABI検査や頸動脈超音波検査(頚動脈エコー)も参考になります。
強い胸痛や心筋梗塞が疑われる場合、冠動脈CTや心臓カテーテル検査が必要になることもあります。その場合は、総合病院と連携して対応します。
生活習慣病がある方は、息切れを軽く見ないでください
生活習慣病は、心臓や血管に少しずつ負担をかけます。特に、高血圧、糖尿病、脂質異常症がある方では、心不全・狭心症・心筋梗塞のリスクが高くなります。
高尿酸血症、慢性腎臓病、喫煙歴、睡眠時無呼吸症候群も、心臓や血管に負担をかける要因です。息切れがあるときは、症状だけでなく血圧、血糖、脂質、腎機能、尿検査の結果もあわせて見ていきます。
健診で心電図異常や不整脈を指摘された方は、健診での心電図異常・不整脈も参考になります。健診結果が気になる方は、健康診断・各種検診の結果をお持ちください。
初診のときに役立つメモ
診察室で緊張して話せなくなる方は多いです。短い箇条書きで構いませんので、以下をメモしておくと診断の助けになります。
- いつから、どんな動作のときに息切れが出るか
- どれくらい続くか、休むと楽になるか
- 以前と比べて悪くなっているか
- 胸の違和感・動悸・めまい・むくみの有無
- 体重の変化
- 持病、内服薬、健康診断での指摘、喫煙歴
メモがなくても大丈夫です。診察のなかで必要な情報を一緒にたどっていきます。
ご家族へ:「大丈夫」と言っているときほど注意を
高齢の方は、ご家族に心配をかけたくない、通院が面倒という気持ちから、症状を控えめに言うことがあります。ご家族が気づきやすい心不全のサインを挙げておきます。
- 歩く速度が落ちた、途中で立ち止まるようになった
- 靴下の跡がくっきり残る、足がむくんでいる
- 夜に咳が増えた、枕を高くして寝るようになった
- 外出や家事を以前より避けるようになった
心不全かどうかは、診察や検査である程度の見通しが立つことが多くあります。これらのサインがある場合は、一度受診を勧めていただくのがよいでしょう。
息切れが気になる方へ
息切れはよくある症状の一つですが、心臓・肺・貧血・生活習慣病など、さまざまな原因が隠れていることがあります。歩くと息切れがするからと外出を控えるようになると、体力低下につながり、さらに息切れしやすくなることもあります。
当院では、総合内科と循環器内科の両面から息切れを評価し、必要な検査と今後の見通しを分かりやすくお伝えします。急な症状の悪化時や、早めに診てほしい時にも受診しやすいよう、予約なしでの診療に対応しています。
「救急に行くほどではないけれど不安」「心臓の病気かどうか気になって仕方ない」という内容でも、気軽にご相談ください。
必要に応じて総合病院へご紹介し、治療が落ち着いた後はかかりつけ医として継続的に診ます。通院が難しい方には、訪問診療による心不全診療も行っております。
参考文献
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- McDonagh TA, et al. 2021 ESC Guidelines for the diagnosis and treatment of acute and chronic heart failure. Eur Heart J. 2021.
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- Virani SS, et al. 2023 AHA/ACC/ACCP/ASPC/NLA/PCNA Guideline for the Management of Patients With Chronic Coronary Disease. Circulation. 2023.
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🏥 診療科:内科、循環器内科
🔷 日本内科学会総合内科専門医、日本循環器学会循環器内科専門医
📍 Myクリニック本多内科医院(横浜市神奈川区反町4丁目27-1)
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監修: Myクリニック本多内科医院 院長 本多洋介


